人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

科学技術週間  科学技術の進歩に触れる

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tanko 2017-4-14 19:20
 東京・千代田区の北の丸公園内にある科学技術館は、文字通り科学技術の普及、啓発のためにつくられた施設だ。3月末、東京に出掛けた折、立ち寄ってみた。「理科離れ」「理系離れ」が指摘されるなかで、子供たちのグループや家族連れなどで盛況だった。不思議なつくりの創作物に触れたり、異次元空間に身を置くなど、科学技術の世界を楽しんでいた。
 17日から科学技術週間だ。日本の科学技術の振興を図るために1960年に制定されたというから、半世紀を超える取り組みになる。期間中、文部科学省は功労者表彰を予定するほか、国内各地で講演会や公開講座、博物館や文化館での特別公開などが行われるという。科学技術館でも無料開館日を設けるほか、関連イベントを予定している。
 文科省の推進要綱によると、科学技術と社会は相対するものとして位置付けられていたが、研究者や国民、産業界などによる「共創」する関係が求められる。そんな科学技術の進歩で恩恵を受けるわたしたちがいっそう理解を深めるための1週間という位置付けのようだ。
 科学技術館の館長は、2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治氏。野依館長は、科学知識について「人類共通の資産。科学知に基づく技術の開発は現代文明の礎」と言っている。科学の営みは「果てしなく続く知の旅」とも語る。
 このため、青少年らが学校での理科教育だけでなく、産学官などによる環境づくりの必要性も訴える。科学技術館内には、協賛・協力企業に常設展示室がある。展示するテーマに関連する企業や団体に制作の協力をしてもらう内容で、「味の素」「昭和シェル石油」「キヤノン」などのコーナーが見られる。
 親子連れや子どもたちのグループのほか、外国人らの姿も多く、見たり触れたりの体験型の展示に列をなしていた。科学を学ぶというより、目の錯覚を利用した面白い空間、てこの原理を活用して車を動かすコーナーなど、遊園地のアトラクションを楽しむ感覚のようだ。
 一方で、理科の学力低下や文系志向などを背景に「理科離れ」「理系離れ」が言われて久しい。文科省の全国学力テストでも理科離れは顕著。「理科が好き」なのは、小学6年生で8割を超え、中学3年で6割程度になるらしい。
 確かに、観察や実験などの体験型授業であれば、一種のアトラクションのようで楽しいのだろう。中学生ともなると、教科書を広げて理論を学ぶ。学年が進むにつれて難しくなり、理解しにくくなるというのは経験上、よく分かる。
 この半世紀、高度成長期を経て商工業技術の進歩は著しい。一般家庭での電化製品の普及は、生活様式を変えるほどだ。かつて、粗悪品の代名詞だった「メイド・イン・ジャパン」は、高品質と信頼性の象徴といえる言葉になった。社会や日常生活を支える科学技術の進歩である。
 胆江地区を含む県南部では今、国際リニアコライダー(ILC)の建設に期待感がある。学術や産業、地域振興など多く分野での効果が期待される。科学技術の恩恵を得られる施設だけに、週間に合わせて知識を深めてみたいものだ。
(小野寺和人)

写真=科学技術を結集し構想されるILC。写真は、本県で開かれた国際会議で、候補地一帯を立体視する航空写真に見入る外国人研究者(昨年12月、一関市で)
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