人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

技術革新 追い求め サンアイ精機(奥州市江刺区)

投稿者 : 
tanko 2017-3-21 19:20

 江刺ふるさと市場そばに本社工場を構える産業装置メーカー、株式会社サンアイ精機。創業以降、大手企業から請け負う金属部品加工を収益源としたが、30年ほど前からイノベーション(技術革新)を旗印に自社製品を次々と開発してきた。その一つは本年度、東北地方発明表彰の中小企業庁長官賞に輝いた。
 菊地晋也社長(44)の父親で会長の寛さん(68)が1973(昭和48)年5月、現在地近くで創業した。それまで奥州市内にある金属加工会社の技術者だったが、「日本の基幹産業である製造業を盛り上げたい」。そう決意し、24歳で独立した。
 創業後、大手企業から受注した部品加工のみで経営を支えてきたが、1989年、自社開発製品を初めて製造したのが節目となった。
 記念すべき自社開発の第1号は、工作機械の縦軸と横軸の動きを精密にするための装置「クロステーブル」。3000台超を売り出すなど顧客の好評を得た。ただ、下請け加工だけでなく、業績へのリスクがより大きい自社開発に乗り出したのには、わけがある。部品加工の仕事の多くがコストの低い中国に移り始めたという、やむにやまれぬ事情もあった。
 しかし、クロステーブル本体も、やがて低価格の中国製品に押されるようになり、注文は激減した。
 新たな活路を見いだそうと、1998年から製造するのが、永久磁石式マグネットチャックだ。切削加工を施す金属材料を磁力で固定するための装置で、今では自社の主力製品に位置付けられる。
 当初は標準タイプのマグネットチャックを生産していたが、試行錯誤を経た2010年。「よりコンパクトで高性能」な製品の開発に成功した。技術協力した岩手県工業技術センターと共に特許も取得。この新製品「強力マグネットチャック」が、中小企業庁長官賞に選ばれた。
 標準品だけでなく、大手が作れない少量生産の特殊な製品を強みとし、マグネットチャックだけでも常に約顴種類を取りそろえる。IoT(モノのインターネット化)を意識した製品づくりも特長という。
 菊地会長ら役員は、宇宙工学や素粒子などの先端技術にも以前から興味があり、北上山地が有力候補地に挙がる国際リニアコライダー(ILC)への関心も高い。菊地社長は「磁力を使う技術など何かの形で対応できれば」と意欲を示す。たとえ思うように参画できなくても、それを呼び水として他分野への技術転用を図るなど、新たな一歩につなげたい考えだ。
(若林正人)

【ひと声】
代表取締役 菊地晋也さん(44)
 「対応力と開発力が経営方針。お客さまのニーズが来てから慌てるのでなく、いかに技術力などのシーズを備えているかで対応力が高まる」
【会社データ】
 江刺区愛宕字金谷127の1。資本金500万円。従業員数13人。1978年に法人化した。マグネットチャックやクロステーブル、電極プリセッターなど自社製品は多彩。金属部品加工の下請けから事業を始めたが、今は自社製品が生産品の9割以上を占める。経営理念に「相互扶助の精神とお客さま第一主義を貫く」などを掲げる。社名はリコー創業者・市村清氏の人や国、勤めを愛するとした「三愛主義」に由来する。

写真上=江刺ふるさと市場そばの交差点前にあるサンアイ精機本社工場
金属を加工する機械設備・マシニングセンターを整える従業員
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