人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ブラックホールから、なぜ物質が出てくる?(天文台水沢・秦助教に学会奨励賞)

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tanko 2017-3-15 9:50
 宇宙空間にあるブラックホールから、電気を帯びたプラズマ粒子が勢いよく飛び出し続ける「ジェット噴出」と呼ばれる現象が存在する。何でも吸い込むはずのブラックホールに起きている奇妙な現象の解明に結びつく研究に、水沢区星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の秦和弘助教(33)が尽力。研究成果が評価され、本年度日本天文学会の研究奨励賞を授与されることになった。
(児玉直人)

 秦助教が観測したブラックホールは、おとめ座の方向にある「M87銀河」の中心部にあり、地球から約5400万光年の場所に位置する。質量は太陽の約30億倍。強大な重力が発生しているはずだが、それに逆らうようにジェット噴出が起きている。矛盾するような現象が起きる理由について、いくつかの理論が提唱されていたものの、それらを検証する観測成果はこれまでなかった。
 秦助教が観測に使用したのは、アメリカ国立電波天文台が運用している超長基線アレイ(VLBA)。10台の電波望遠鏡を連動させ、高い精度で行った。
 その結果、ジェット噴出がどこから始まっているか精密に測定することができ、同時にブラックホールの位置も把握できた。これまでは、重力が強すぎてプラズマ粒子を観測することができず、噴出の源流部分の詳細が確認できなかった。秦助教は「東京ドームの座席を知りたいのに『東京都文京区にあります』と言われているようなもの。今回の成果は、座席番号までしっかり把握できたのに等しい」と説明する。
 このほか、ジェット噴出の形状を精密に観測することもできた。同天文学会は「長年論争となっていた電波で見えるジェット噴出の構造とブラックホールの位置関係に明確な回答を与えた」「今後の研究に大きな影響を与える」と功績をたたえる。
 島根県出身の秦助教は総合研究大学院大学を卒業後、イタリア国立宇宙物理学研究機構研究員を経て国立天文台に。昨年から水沢で研究生活を送っている。「水沢は自分の故郷と同じような雰囲気で、すごく気に入っている。機会があれば多くの地域の人たちに自分たちの研究を伝えたい」と話している。
 賞の授与と記念講演は、15日から九州大学で開かれる日本天文学会春季年会の中で行われる。

写真=日本天文学会研究奨励賞に輝いた国立天文台水沢の秦和弘助教
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