人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILCへの期待と疑問点 率直に(企業経営者や高校生ら知事囲み意見、提言)

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tanko 2017-1-18 10:10
 国際リニアコライダー(ILC)誘致に向けた取り組みについて、達増拓也知事が県民と意見交換する県政懇談会が17日、平泉町の平泉文化遺産センターで開かれた。参加した企業関係者や高校生からは、北上山地がILC有力候補地であることは産業面で大きなチャンスとする声があった一方、「地元住民の間には、人ごとのように感じている雰囲気がある」「自然環境保護や放射線の影響に対する丁寧な説明が必要」との指摘もあった。

 知事との懇談に出席したのは▽千田伏二夫さん(前沢、千田精密工業代表取締役)▽佐々木正さん(農事組合法人アグリ平泉代表理事)▽水戸谷剛さん(盛岡、東日本機電開発代表取締役)▽高橋幸博さん(水沢ツーリストサービス専務)▽千葉朱璃さん(県立一関第一高校2年)▽千葉壮太さん(同)――の6人。各自の立場や現在取り組んでいることなどを交えながら、ILC計画に対する思いを自由に話してもらった。
 千田さんは「中小企業にとって困難な海外展開して行うようなレベルの仕事が、地元でできることは大きな魅力。国際的なものづくりに携われることは地域産業の大きな柱になるし、若い人たちに夢を与える」と述べた。
 同じく製造系企業を経営する水戸谷さんも、地域経済に大きな影響を与えるプロジェクトとして、ILCを受け止めている。その上で「ILCが認知されているとはいえ、どちらかと言えばものづくり産業が中心の盛り上がりとなっている。農業など他分野でも関心を高くしていく必要がある」と述べた。
 佐々木さんも「農業とILCとの結びつきをどう考えたらよいか難しい」としながら、研究者の衣食住、レジャー面で地域農業との関係構築に期待を寄せた。さらに、「北上山地では酪農を営んでいる人もいる。ILCは自然環境にどのような影響を与えるのか。振動や放射能の有無など細かな部分の疑問にも丁寧に答えていくべきではないか」と注文した。
 高橋さんは「ILCは岩手の観光にとっても、大きな魅力になり得る。視察や学習旅行などの形で国内外から多くの人たちが訪れるだろう」とした上で、言葉の問題などを改善していく必要性を指摘。また「ILCが来る、来ないに関係なく、まちづくりを充実していくことは大切だという見方もある。良い地域をつくろうという意識が必要」と強調した。
 高校生の2人は、疑問や不安に思うことを率直に述べた。朱璃さんは、国際化や雇用拡大に期待しつつ「今日の参加者のように、ILCに関わっている人たちはよく知っているが、人ごとのように感じている人もいる。造り始めてから『ILCはいらない』とならないよう事前説明が必要ではないか」との考えを示した。
 壮太さんは、大学の研究予算が削減傾向にあるとのニュースを例に「日本は『すぐに役立つ研究』や安全保障のほうに予算を割いているので、基礎科学研究は不要というような流れになっていないか心配。ILCで行うような基礎科学研究は、確かに『すぐに役立つこと』ではないが、このような研究があるから、役立つ研究ができる。中高生向けにもこうした固定観念を払拭するような取り組みをしてほしい」と訴えた。
 達増知事は「日本政府の判断を待っている状況だが、今年はその“勝負時”とも言われている。県としても早く政府の結論が出るよう努力したい」と話していた。

写真=達増拓也知事(右)とILC誘致に対する意見を交わす懇談会の参加者たち
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