人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

有力候補地岩手に集結(LCWS2016 盛岡で開幕)

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tanko 2016-12-6 10:30
 江刺区東部を含む北上山地が有力候補地となっている「国際リニアコライダー(ILC)」をはじめとする、素粒子物理学の研究について世界中の研究者が議論し合う国際会議「リニアコライダー・ワークショップ(LCWS)2016」が5日、盛岡市の県民情報交流センター(アイーナ)などを会場に始まった。ILCの実現を目指す上で、日本政府の決断が待たれるが、膨大なコストや人員確保、国民理解の醸成など課題は多い。会議では研究方法や装置構造の工夫などによって、いかにコストを抑えることができるかも議論されるとみられる。
(児玉直人)


 LCWSは、直線型加速器を用いて素粒子実験を行う物理学者らが最新の研究成果などについて意見を交わす場。国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が主催し、開催地の地元研究者らによる組織委員会が運営。アジア、欧州、北米の世界3地域を順番に巡る形で毎年開催している。日本での開催は3年前に東京大学で開催して以来。今回は22の国と地域の研究機関や大学に所属する研究者350人が参加した。
 アイーナ内のホールで開かれた全体会議の開会セレモニーでは、達増拓也知事が英語でスピーチ。岩手の風土や平泉世界遺産を紹介したほか、国立天文台水沢VLBI観測所の前身「緯度観測所」で木村栄博士が「Z項」を発見したことに触れ「こうした歴史を持つ岩手では、人類の科学の進歩に大きく貢献するILCに大きな期待を寄せている。皆さんが快適にこの岩手で暮らしていただけるよう、病院や学校、買い物環境など、県民を挙げてサポートする万全の態勢を市町村や関係団体と共に構築していきたい」と述べた。
 現地実行委員会議長を務める岩手大学理工学部の成田晋也教授は、報道陣の取材に「最大の開催目的は研究状況の把握だが、有力候補地がどのような場所なのかを伝える良い機会になると思う」。ILCを実現する上で課題となっているコスト問題に関しては、「技術的にILCは実現できる状況だが、コストを下げつつより質のいい技術を確立できないか、各分野でも意識していると思う」と述べた。
 LCWS2016は9日までの開催。6日はLCC最高責任者のリン・エバンス氏(英国)が、LCCに変わる新組織の設立について記者会見を予定。また同日は、LCWS併催行事として、ILCシンポジウムが盛岡中央公民館で開かれる。9日は候補地の地元である奥州市や一関市を研究者らがバスで視察する。

写真1=LCWS2016参加のため集まった国内外の素粒子物理学の研究者ら。写真右手前がLCC最高責任者のリン・エバンス氏=盛岡市のアイーナ
写真2=歓迎のあいさつをする達増拓也知事
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