人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

サンアイ精機(江刺)開発の磁力固定器具 中小企業庁長官賞を受賞

投稿者 : 
tanko 2016-11-18 10:00
 精密な金属部品の加工を実現するための固定器具を開発したとして、江刺区愛宕字金谷のサンアイ精機の菊地晋也代表取締役(43)らにこのほど、本年度東北地方発明表彰中小企業庁長官賞が贈られた。同社は切削加工を施す金属材料を磁力によって固定する装置「強力マグネットチャック」を開発。既に自動車や電気製品など、高精度な部品加工が求められる製造現場で使用されている。

 同表彰は、公益社団法人発明協会(野間口有会長)が毎年実施している地方表彰の一つ。全国を8ブロックに分け、各地域で優れた発明品を完成した人たちや、その指導に携わった人たちをたたえている。今回、サンアイ精機が受賞した中小企業庁長官賞は文部科学大臣賞、特許庁長官賞と並ぶ上位表彰に位置付けられている。
 同社が開発・製造したのは、鉄鋼材料などを加工する際に使用する固定器具。高精度の切削加工では、材料が振動などで動かないよう、万力のようなもので挟んだり、ボルトで止めたりして固定している。
 しかし、強く固定しすぎると材料を変形させたり傷を付けたりする恐れがある。また、材料と固定器具が接している部分には加工装置が入り込めないため、材料を固定器具から一度取り外し、位置を変えて再度装着する手間が生じる。効率が悪いばかりか、再装着の取り付け位置がわずかにずれるだけで、精度の落ちた部品が仕上がってしまうという。
 こうした課題を解消しようと、同社は磁力で材料を固定する器具の開発に着手。県工業技術センターの目黒和幸主査専門研究員と共に試行錯誤を重ね、切削加工の振動などに耐えられる強い磁力と、材料の着脱がしやすい弱い磁力との切り替えが容易にできる固定器具を生み出した。
 磁力のオン、オフは専用のレバーを使ってスイッチを動かすだけで可能。電力は使用しておらず、熱も発しない。加工が終わるまで、固定器具に素材を付けたままにできるため、複数工程を経ても精度の狂いが生じにくくなるほか、器具の活用方法を応用すれば、作業の自動化や無人化にも対応できるという。
 中小企業庁長官賞は、開発に携わった菊地代表と目黒主査専門研究員の2人が受賞。同技術センターの斎藤淳夫理事長には実施功績賞が贈られた。
 菊地代表の父、菊地寛会長(67)は「時代の流れに私どもの製品がマッチングできた。ものづくりの先進国らしい、他と勝負ができるような製品づくりのお手伝いができれば」。菊地代表は「中小企業でもチャレンジすれば評価されることを実感できうれしい。今後は異業種からもさまざまなアイデアを頂き、大手だけでなく地元の中小企業の皆さんにも活用されるようなものを生み出したい」と話していた。

写真=開発した強力マグネットチャックを手にする菊地晋也代表。表面に加工部品を乗せ、側面中央の穴にレバーを取り付けスイッチを入れると、強力な磁力が発生し部品が固定される
トラックバックpingアドレス http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/tb.php/522

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動