人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

科学都市へ発展を 江刺で市民シンポ

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tanko 2013-3-10 5:50
 国際リニアコライダー(ILC)シンポジウムINおうしゅう(奥州市、奥州市ILC推進連絡協議会主催)は9日、江刺区の江刺体育文化会館(ささらホール)で開かれた。同区東部の北上山地が有力候補地となっているILCの建設意義や、設置による地元への波及効果などについてあらためて理解を深め、建設実現へ向け思いを一つにした。パネルディスカッション(意見交換)では次代を担う高校生から、市民周知が不足していることや自然環境に配慮した対応を求める声が上がった。

 市民のILC誘致意欲を高める狙いで開催。一般市民や関係機関・団体など約500人が会場を埋め、関心の高さをうかがわせた。
 「ILCで、こんな奥州市を創りたい!」をテーマに掲げたパネルディスカッションでは、▽大平尚・県首席ILC推進監▽県立水沢高校2年軍司啓宏君▽千田ゆきえ・?千田精密工業取締役▽佐藤剛・市国際交流協会長▽小沢昌記市長――の5人が、それぞれの立場からILC設置への期待や今後の展望などについて意見を交わした。
 軍司君は「ILC建設が決まれば市に多くの研究関連施設ができることになり、都市としての発展も期待される。誘致を機に、今まで以上に科学が盛んな都市へと発展させていきたい」と語る。
 一方、市全体として地域での盛り上げの足りなさを指摘。科学への興味関心をかきたてる環境づくりに向け、親子で参加できる科学教室の開催や、自身が物理学に興味を深めるきっかけにもなった「科学体験研修」のさらなる充実、高校生から小学生への出前授業の積極開催など、具体的な例を挙げた。また「都市化によって、今ある自然がなくなるのはよくない。もしILC建設が決まったら、緑を生かした都市づくりをお願いしたい」と要望した。
 諸外国からの研究者、技術者の定住を想定し、佐藤会長は「1000人単位の外国人登録が必要となり、日本人だけの行政職員では対応が難しい。正規職員として多言語を使いこなす人材を採用することが必要」と主張。多様化する文化にとどまらず、医療や教育環境の整備の必要性にも触れ「基礎科学特区のようなものを設置し、諸課題をカバーすればいい」とした。
 千田さんは「ILCの加速器を加工できる会社は岩手、東北にもたくさんあるはず。それら企業の技術力を結集してILCができれば、素晴らしい」と夢を広げた。
 シンポジウムでは、ILC国際共同設計チームアジア地区ディレクターで、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の横谷馨名誉教授による基調講演も行われた。市民から寄せられた誘致の実現性の質問に対し「アメリカは数年前から財政危機となり足踏み状態。ヨーロッパ最有力のCERN(スイス)は2030年ごろまで大型円形加速器による研究スケジュールが詰まっており、それが完了するまでは何もできないと言っている。できるとすれば日本しかないという状況だ」と述べた。

写真=ILCの北上山地建設へ向け希望や展望を語り合うパネリスト
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