人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

都心に北上山地の模型 (全長15メートル、長坂常氏=建築家=が設計)

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tanko 2016-11-1 11:50
 北上山地が建設候補地となっている素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の巨大ジオラマ模型がこのほど、東京都港区の「東京ミッドタウン」にお目見えした。建築家の長坂常氏=スキーマ建築計画代表=がデザインしたもので、全長は15m。ILC計画は国民理解を得る前段として、計画そのものの認知度を高める必要があるだけに、関係者は異分野との連携による周知拡大に期待を寄せている。展示は6日まで。
(児玉直人)

 巨大模型は、海外で高い評価を受けている日本人デザイナーや企業にスポットを当てるイベント「サローネ・イン・ロッポンギ(Salone in Roppongi)」のメーン展示物として制作された。
 同イベントは、毎年何らかのテーマを設け「日本のデザイン力」を発信している。今回はILCをデザインの力で分かりやすく伝える試みに、建築から家具まで幅広いデザインを手掛けている長坂氏が挑戦。ILC計画を推進する国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が協賛、誘致団体の「先端加速器科学推進協議会(AAA)」協力した。
 茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)を訪問するなどしてILCの全体像をつかみ、構想を練った長坂氏。北上山地のILC建設想定エリアを地中から切り抜いたような模型を設計した。
 製造には、寺院などを取り囲む土壁を作る際に行われていた日本の伝統工法「版築」を用いた。板で作った型の中に土を押し込み、何層にも踏み固めて壁を築く手法で、衣川区の国指定史跡・長者ケ原廃寺跡の築地壁を作る時にも使われていた。
 試作を経て、10月28日から2日間にわたり会場で制作。美術大生のほか、ILC推進に携わる東京大学の山下了特任教授らも作業に参加した。
 模型の上面には北上山地の衛星写真を基に、山々の起伏や集落を再現。また、模型本体の一部は切り抜かれていて、地中に加速器がどのように配置されるのかが一目で分かる。側面に設けられたのぞき窓からは、電子と陽電子の衝突現象をイメージした映像を見ることができる。
 長坂氏は「『知らないことを知れる』いい機会になると思い興味をそそられた。あまりにも巨大な設備と、(素粒子のような)あまりにも小さなマクロの世界であり、両方とも建築の世界が入り込むこと自体難しい領域だが、そこに踏み込んでみたいと思った」とコメントしている。
 LCCの広報業務を担当するKEKの高橋理佳さんは「奥州市から上京中の人が偶然にも通り掛かり、『こんなところで、ILCのPRをしているとは思わなかった』と喜んでいた。ILCもさることながら、加速器という言葉を知っている人が想像以上に多かった。ぜひ候補地の岩手でもこのような参加型イベントを開催できたら」と期待を寄せていた。

写真=東京ミッドタウンに出現したILC建設予定地をイメージした巨大模型 (C)A.KONDO
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