人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ノーベル物理学賞受賞者・小柴氏設立 平成基礎科学財団が解散へ(ILC普及活動も支援)

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tanko 2016-10-26 10:10
 2002(平成14)年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏=東京大学特別栄誉教授=が理事長を務める平成基礎科学財団(事務局・東京)が、来年3月で解散する。行財政の悪化で地方自治体からの寄付が減少していることや、学術・芸術分野に寄付をすることが社会的に定着していないこと、幹部の高齢化や他業務との兼務が難しいことなど、複数の要因が背景にある。江刺区東部などが候補地となっている素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」に関する科学教室も開催してきたが、同財団理事の鈴木厚人・県立大学学長は「他の理事とも協議を重ねたが、やむを得ない」と話している。
(児玉直人)

 同財団は、小柴氏のノーベル賞賞金などを基本財産に2003年10月に設立。理科教育や素粒子研究に功績のあった個人や団体を顕彰する賞の贈呈や、学生・生徒を対象とした「楽しむ科学教室」の開催などを展開していた。
 運営にかかる費用の大半は、地方公共団体や法人からの賛助会費に依存。ところが、行財政が逼迫する昨今の情勢の影響を受け、寄付減額や退会を申し出る例が増えていた。特にも首長が交代した自治体を中心に深刻になっていたという。
 小柴氏は財団ホームページに公表した解散に関する文書の中で、日本における学術や芸術文化事業の財源は、国からの財政支援に依存していると説明。「欧米諸国と異なり文化事業に寄付をする慣行が社会的にいまだ定着していないこと、慣行を確立するための法整備が遅れていることに根本的な原因がある」と指摘した。
 解散に至ったもう一つの理由は人事面。小柴氏をはじめ財団幹部の高齢化が進み、大学や研究所のトップとして研究や業務に従事している人もいるため、財団運営を維持するのが困難になった。
 同財団は今月30日に盛岡市で開催する「楽しむ科学教室・タイムマシンで宇宙の誕生を見に行こう―ILCが明らかにすること―」など、当初予定していた年度内事業を行った上で来年3月に解散する。残余財産は小柴氏の研究母体で、ILC計画にもかかわりがある東京大学素粒子物理国際研究センター(駒宮幸男センター長)に贈与する。
 小柴氏のまな弟子であり、ILC計画にも携わっている鈴木学長は「ILCなど基礎科学全般の周知活動をする団体が一つなくなることにはなるが、KEK(高エネルギー加速器研究機構)や関係自治体などが行っているキャラバン活動、出前授業などによる普及の充実に期待を寄せたい」と話している。

写真=平成基礎科学財団の理事長を務めている小柴昌俊氏(2003年5月、奥州市文化会館で)
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