人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

東北ILC準備室 仙台に事務所(広域基本計画を来年半ばに策定へ)

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tanko 2016-8-30 9:40
 北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)の実現を見据え、具体的な地域づくりの計画策定や産業支援、受け入れ態勢の整備などに関する諸活動を取り仕切る「東北ILC準備室」の事務所が29日、仙台市内に開設された。室長を務める鈴木厚人県立大学学長らが看板を掲げたほか、集まった報道陣に同室の活動状況について紹介した。同準備室はILC実現による東北地方の地域将来像を具体化する「広域基本計画」を来年半ばにも策定する考えだ。
(児玉直人)


 同準備室の設置は、今年6月の東北ILC推進協議会(事務局・東北経済連合会=東経連)総会の席上で承認されていた。▽岩手大▽岩手県立大▽東北大▽岩手・宮城両県▽仙台市▽岩手県ILC推進協議会――の関係者らで構成する。
 東経連は、東北大学と共に「ILCを契機とした東北・北上エリアグランドデザイン」(基本構想)を策定。「東北ぐらし」をキーワードに、ILC誘致実現による東北地方での質の高い「暮らし」が、地元住民や研究者を問わず実感できるような地域将来像を描いている。
 グランドデザインの考えを反映させた「地域広域基本計画」の策定作業を進めるのが同準備室。鈴木学長によると、同基本計画は来年半ばにも策定させたい考えだ。このほかにも、ILC計画の周知を図る広報活動や、受け入れ時に必要な設備の検討など、四つの部門と二つの専門部会を設置しILC実現に関係するあらゆる準備作業を進める。
 この日は、同準備室の活動を中心にILC誘致に向けた取り組みの進展状況を報道機関に説明。同準備室はILC推進の状況を広く周知する方法の一つとして、報道機関向けのレクチャーや各種周知の依頼などもしていくという。
 報道説明会の前には、準備室の事務所開設セレモニーを実施。事務所は東経連が入る仙台市内のビルの別フロアに設けられ、鈴木学長と大江修・東経連専務理事(準備室事務局長)が看板を掲げた。通常はネット回線などを利用して連絡を取り合うため、事務所には常駐のスタッフは置かないが、関係者が一堂に会する会議がある場合などに使用するという。鈴木学長は「ILC建設にゴーサインが出た時点で『東北は準備万端』と言えるような状況にしたい」と意気込んだ。
 ILCに関する各種取り組みが進められる一方、依然として全国的に計画自体が十分に知られておらず、東北や岩手県内であっても、沿岸被災地や県北などで誘致の意義が知られていない実情もある。鈴木学長は「県の科学ILC推進室が中心となり、関係機関が連携して実施する『ILCキャラバン』をどんどん展開していきたい。県内の外国人市民からも協力したいとの声が出ている。その輪を広げていければ」と願う。
 同準備室で広域基本計画を担当する東京大学の山下了特任教授は「ILCが実現することによってどんなことができるか考え、地域の方々に参加してもらうことによって波及効果が表れる。いかに多くの方々に参加してもらうかが勝負となる。そういう観点からすると、準備室が果たす役割の中でも、広報部門は非常に重要な役割を担うことになる」と話す。

写真=東北ILC準備室の看板を掲げる室長の鈴木厚人・県立大学長(右)と東経連の大江修専務理事
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