人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致する意義強調(早稲田大の伊藤滋教授)

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tanko 2016-5-13 13:20
 早稲田大学特命教授の伊藤滋氏は12日、仙台市内で講演。国際リニアコライダー(ILC)建設候補地としてふさわしい風土や地域の魅力を列挙しながら、「新たな発展を生み出すプロジェクトだ」と強調。一方で「ILC誘致を決める上では、東北だけでなく日本国民の理解が必要だ」と指摘した。
 伊藤氏の講演は、仙台市秋保で今月20、21日に開かれる「G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議」の記念行事として開かれたシンポジウム「ILCと東北の創造的復興」の中で行われた。東北経済連合会(東経連、高橋宏明会長)が主催し、約300人が参加。小沢昌記奥州市長、いわてILC加速器科学推進会議の亀卦川富夫代表幹事、NPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長らも出席した。
 伊藤氏は、東北大学や東経連が中心となり策定する「ILCを契機とした東北・北上エリア グランドデザイン」の検討委員会委員長を務めている。
 北上山地の花こう岩帯や水沢区の国立天文台水沢キャンパス、二戸市出身の地球物理学者・田中館愛橘(1856〜1952)の存在に触れながら「天然の恵みである花こう岩の存在、田中館博士のような人材を生み出す東北の風土が一緒になると、新たな発見を生み出すのでは」と強調。「ILCに関係した加速器製造やメンテナンス技術は、日本人だからこそできるような緻密かつ正確さが要求される。しかも大企業ではなく、地域の企業の力が求められる。ILC誘致を機に、仙台―盛岡間の地域に関連産業が展開されるだろう」と期待を寄せた。
 また、ILCとまちづくりに関しては「奥州平泉文化とILCを結び付け、世界に地域の魅力をもっと発信してほしい」と呼び掛けた。
 一方で、プロジェクトにかかる費用が1兆円超という規模であることを取り上げ、国民の理解を得ることが欠かせないと指摘した。
 シンポジウム後半では、前沢区の千田精密取締役の千田ゆきえ氏らが登壇し、ILC受け入れ態勢などをテーマにしたパネルディスカッションが繰り広げられた。同社では、素粒子物理学の実験に必要な精密金属部品の納入をしている実績がある。地元企業のILC関連産業の参入に関し、千田氏は「常に高いアンテナを持つことが必要。このようなシンポジウムや講演会に顔を出すことは、関連産業参入のきっかけに結び付くだろう」と述べた。
 シンポジウムを主催した東経連は、G7開幕前日の19日に開かれる歓迎レセプション会場に、ILCのジオラマ(模型)を展示する予定。主要国の要人らにILCプロジェクト実現に向けた取り組みをアピールするという。

写真=ILC誘致の意義などについて講演する伊藤滋氏
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