人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

文科省の「ゴーサイン」見据えプラン策定(KEK)

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tanko 2016-1-9 5:20
 国際リニアコライダー(ILC)計画の国内推進母体となっている、高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市、山内正則機構長)は8日までに、「KEK−ILCアクションプラン」を策定した。文部科学省がILCの誘致建設を前提とした諸外国との交渉を始めることを正式決定した場合、KEKが取るべき対応を網羅。想定されるスケジュールや組織体制、必要となる人材数をより明確に示し、本格的な準備へスムーズな移行を目指す。(児玉直人)

 ILCは物質の起源や宇宙誕生の謎を探るため、世界に唯一設置される素粒子物理学の国際研究施設。江刺区東部などの北上山地が建設有力候補地になっている。
 同プランは昨年5月、山内機構長の提言を受け策定作業がスタート。ILC有識者会議での協議を踏まえ文科省が「ゴーサイン」を出した場合を見据え、KEKが取るべき対応や組織体制、必要な人材についてとりまとめた。
 ILCの実現までには、三つの段階を踏むと想定。初段階は特定の準備予算を伴わない「予備準備期間」で、現在はこの時期に当たる。
 文科省が「ゴーサイン」を出した後、予備準備期間から速やかに「本準備期間」に移行する。「ゴーサイン」については、これまでもILC関連の会議や講演会でも登場してきた言葉だが、今回のプランで「文科省から『ILCの実施を前提に諸外国との交渉を始める』という正式発表があること」と明確に定義した。
 本準備期間は4年間で、相当の予算措置がある状況を指す。ILCの国際協力の枠組みとして現在設置している研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)は、ILCプレラボ(事前国際研究所、仮称)に移行し、KEKに本部機能を置く。加速器の工学設計のほか、政府間交渉の補佐、プロジェクト承認活動に責任を持てる体制を構築する。
 最終段階の「本建設期間」は約10年を見込む。政府間の正式な合意が成立し、ILC計画が承認された段階で、施設建設や実験施設運転を統括する新国際研究所「ILCラボラトリー」を設立する。
 これらの流れを基にスケジュールを想定すると、仮に2016年度にゴーサインが出て本準備が始まった場合は、2020年度に本建設開始、2029年度実験開始となる。ゴーサインが2017年度や2018年度なった場合、本準備や本建設の開始時期は後年度にそのままずれ込むと想定する。
 プランでは必要な人材数についても明示。スタッフは専任だけでなく、国内外の大学や研究所に所属しながら併任や協力するメンバーもいることから、実人数ではなく一人の常勤雇用者が処理できる仕事量を表す「FTE」(フルタイム当量)で算定した。
 海外からの貢献人材については、本準備期間中に全体の20〜40%の範囲で順次高める。建設段階には50%またはそれ以上を想定する。
 策定作業に携わったKEKのワーキンググループは、プランのまとめの中で「準備期間における組織、技術課題、必要な人材確保と育成を検討しアクションプランをまとめた。プランは今後、国内外でILC実現への道筋を議論するための基礎的な情報の一つとして役立てることができる」としている。
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