人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

歯車かみ合った連携 もっと  (2015年 取材ノートより)

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tanko 2015-12-25 14:40
 「震災復興もILCも『大風呂敷』どころか『小さな風呂敷』さえ存在しない。後藤新平がこの状況を知ったら、怒りも嘆く気力さえも持たないだろう」
 3月下旬、仙台市内で開かれた講演会で中央大学理工学部の石川幹子教授は指摘した。東北の国際リニアコライダー(ILC)誘致関係者が居並ぶ中でのこと。過去に聞いた講演では非常に穏やかな口調が印象的だったが、その日は違った。驚きと同時に「そうだ、そうだ」とペンを走らせながら強くうなずいた。
 石川教授は、ILC国内候補地を選定する立地評価会議で社会環境基盤専門委員を務めている。仙台での講演から1カ月余り後、文部科学省でILC有識者会議を取材する機会を利用し、文京区の中央大キャンパスを訪れ、じっくり話を聞いた。
 「のぼり旗や看板を設置して地元の熱意を伝えているが、何か空回りしていますよね。科学や経済など、一部分だけの話題で盛り上がっているかのようで……」と語る石川教授。地域の自然や文化などの特色を生かしたまちづくりは、研究者組織や国にはできない仕事だと強調する。
 看板設置に限らず、講演会やグッズ作製など、一つ一つの取り組みは決して悪いことではない。だが、歯車がうまくかみ合わなければ効果は広がらず、温度差を広げる可能性もある。ひょっとしたら石川教授の指摘と同じことを地域住民も抱いているかもしれない。
 石川教授に取材した翌日、都内ホテルで超党派国会議員で組織する「ILC議連」が、国内外の研究者から情報を聞く場があった。文科省有識者会議や研究者らによるフォーラムもそうだが、北上山地から遠く離れた場で、私たちの地域の将来に関わるプロジェクトの議論や動きが展開している。
 これらの動きを取材した記事が“小さな歯車”となって、地域の誘致活動の回転に連動してもらえれば。またはその逆も願いながら、来年も取材に臨みたい。(児玉直人)

写真=ILC議連の国会議員団を前に、計画の動向などを説明するリニアコライダー・コラボレーション最高責任者のリン・エバンス氏(右)ら国内外研究者(4月22日、東京都内のホテル)
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