人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

コラム 時節の風景  「多言語表記、地方にも」

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tanko 2015-12-18 14:20

 外国人観光客を呼び込む取り組みが各地で見られる。2020年の東京五輪をはじめ、当地方では国際リニアコライダー(ILC)計画などを見据える対策だ。人口減少時代を迎え、労働人口や交流人口の確保は欠かせず、在住外国人の利便性向上と合わせて、取り組み強化が求められている。
 奥州市は、外国人向けの案内表示についての取り組みを支援する助成事業を始めた。多言語表記によるパンフレットやメニュー、ホームページ作成などの経費を一部助成。施設内外の情報案内板の設置、外国人の受け入れ環境を高めるとみられる取り組みなどを想定している。
 市地域づくり推進課によると、外国人の住民人口は4月末現在、441人。中国、フィリピン、韓国など国籍は25カ国に上る。外国人向けの情報案内は、在住外国人と市長が意見交換する「タウンミーティング」などでも要望される行政サービスの一つだ。
 市役所庁舎や公的施設で施設名や部署名などに英語が併記されるケースが見られるようになった。市ではこれまで、市国際交流会の協力を得て英語表記の観光パンフレットを製作する一方、本年度はILC実現への機運を高めるため、市内周遊ルートを紹介するパンフレットもつくった。
 日本語表記に加え、英語と中国語、韓国語(ハングル)の4種類。特に中国語は、中国大陸やシンガポールなどで使われる「簡体字」と台湾や香港などで主に使われる「繁体字」の2種類を製作した。
 今回の助成事業は、国の「地方創生先行型」と呼ばれる交付金事業を活用する。自治体の地方版総合戦略の早期策定を財政面から支援する内容で、企業誘致や定住、観光振興、子育て支援など対象事業は多岐にわたる。
 市は、新たに多言語表記を促進するため、補助金制度をつくり、公募を始めた。対象になるのは、観光物産施設や飲食施設、ホテル・旅館、鉄道、バス・タクシーなどの事業者。表記には日本語と英語を含む。日本語の分からない人にも情報を伝えられる標準案内用図記号(絵文字)も用いる。対象経費の3分の2を補助し、上限は30万円。
 今のところ、江刺区の歴史公園・えさし藤原の郷で、園内案内用マップ看板、見学ルート看板の設置が予定されているほか、無料の無線通信「wi-fi(ワイファイ)」設置も計画されている。
 多言語による情報案内は、奥州市に限らず、アジアマスターズ陸上競技選手権が開かれた昨年度に北上市でも同様の取り組みが始まった。
 外国人が滞在しやすい環境整備、情報の発信強化は、国際交流や居住外国人の生活利便の向上の点からも欠かせない官民サービスの時代。誘客促進にとどまらず、地方都市にあっても文化的価値を高める取り組みでもあるようだ。

写真=英語、中国語(繁体字と簡体字)、ハングルでつくられた奥州市の観光案内パンフレット
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