人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

誘致実現→国際化に伴う医療対応 “違い”の説明 重要な鍵(斎藤氏=独マインツ大教授=が講演)

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tanko 2015-11-17 9:20
 ドイツ・マインツ大学教授や岩手大学客員教授を務める斎藤武彦氏(原子核構造物理学専攻、神奈川県出身)はこのほど、水沢区龍ケ馬場の岩手県立胆沢病院(勝又宇一郎院長)で講演。素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」の北上山地誘致が実現した場合、地域で外国人研究者らが中・長期間滞在することに関連し「日本と海外とでは医療保険制度が異なる。外国人が住みたいと思うようなまちを目指すならば、行政や近隣住民が丁寧な説明を心掛けることが重要な鍵となる」と述べた。(児玉直人)

 「ILCと医療」について一般市民や同病院関係者に理解を深めてもらおうと、同病院と奥州市国際交流協会(佐藤剛会長)が共催。一般市民や同病院関係者ら約60人が聴講した。
 ILCが北上山地に建設された場合、外国人研究者や技術者が家族と共に中・長期間にわたり滞在することが見込まれている。彼らを受け入れる上で、日常生活に直結するサービスや制度の仕組みをしっかり説明することが重要となる。
 医療保険制度もその一つで、日本と海外とでは患者の自己負担の有無や適用範囲などは大きく異なる。斎藤教授もドイツで生活し始めたころは、現地の医療保険の仕組みが分からず、苦労したという。
 妻子と3人暮らしの斎藤教授は、ドイツの医療保険に加入し、毎月18万円(家族総額)の保険料を支払っている。ただし、歯科や特殊な治療例を除き、治療費は全額保険でカバー。通院時の支払い(自己負担)は生じない。重粒子線がん治療など最先端高度医療などに対しても適用されるという。
 「しっかりとした説明がなければ、外国人は通院すらためらうかもしれない。それは、気持ちの面からみても苦しいこと」と斎藤教授。「日本の医療保険制度を今すぐ変えることは難しい。それ以外で可能なことは、外国人研究者らに丁寧な説明をすること。行政だけでなく、近所の人たちも日本語で構わないから支えるような雰囲気をつくってほしい。そうしたサポート環境の有無も、研究者たちが生活する場を選ぶ上で一つの基準になると思う」と述べた。
 斎藤教授は今月、岩手、宮城、福島の3県で2週間にわたり小学校などを訪問し科学授業を展開。奥州市内では胆沢病院のほか、市少年少女発明クラブの児童や保護者らに対しても科学やILCに関する特別授業を実施した。

写真=「日本と海外の医療保険制度の違いをしっかり説明することが重要」と説く斎藤武彦教授
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