人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

文科省有識者会議示した諸課題  ICFAが見解用意、年内に送付

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tanko 2015-9-10 10:00
 文部科学省の「国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議」が今年6月、「これまでの議論のまとめ」と題し、ILC誘致をめぐる提言や諸課題を公表したのを受け、「国際将来加速器委員会(International Committee for Future Accelerators=ICFA(イクファ))」は、「まとめ」に対する見解を文書にし、年内にも有識者会議に送付する意向だ。東京大学素粒子物理研究国際センター長の駒宮幸男教授が今月3日、研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」のホームページに掲載した解説記事(英文)の中で伝えた。
(児玉直人)

 ICFAは、高エネルギー物理学界で影響力のある世界主要加速器研究所の所長や研究代表者で構成。ILCのような高エネルギー加速器の建設や運用に関する国際協力体制などを協議している。2009〜2011年までは、当時、高エネルギ加速器研究機構(KEK)の機構長だった鈴木厚人・県立大学学長が議長を務めた。
 駒宮教授によると、8月19日にスロベニアの首都リュブリアナで開かれたICFAの会合後、ヨアキム・ムニック議長=ドイツ電子シンクロトロン研究所理事=は、有識者会議の平野真一座長(名古屋大学名誉教授)宛てに手紙を書いたという。
 手紙では、今年6月25日に同会議が示した「これまでの議論のまとめ」の内容をICFAとして協議した旨を報告。「ILCコミュニティーにとって励ましになる」などと、謝意を伝えた。
 有識者会議は「まとめ」の中で、(1)国際的な経費分担と、巨額投資に見合う科学的成果への見通しを得ること(2)LHC(欧州合同原子核研究機構が運営する実験施設)が2017年末まで計画している実験の結果に基づき、ILCの性能や得られる成果を見極め、技術課題の解決やコスト面のリスク低減を明確にすること(3)国民や他の学術界の理解と合意形成を図ること――の3点を提言している。日本語版のほか、英訳版も作成され公表している。
 提言は文科省に対するもので、ICFAが公式に回答を求められたわけではない。ただ、英訳版が作成されたことなども踏まえ、指摘された課題の整理や必要な解決策をICFAとして明確にすることで、有識者会議の議論にフィードバックを掛ける狙いがあるとみられる。
 ムニック議長は、ICFAの見解を文書にまとめ、年内に送付する用意があると伝えた。さらに、有識者会議で必要な情報があれば、ICFAは随時応じることも付け加えた。
 解説記事の中ではこのほか、駒宮教授が「まとめ」が意図することなどを説明。「(ホスト予定国の)日本がゴーサインを出さない限り、各国が参加表明できないのは分かる。しかし、今必要とされているのは参加の確約ではなく、各国の政府高官がILCの重要性や研究者界の熱意を理解しているという点だ」とし、日本政府に各国の動きが見えるよう、海外の研究者が自国の政府担当者に積極的な情報提供をするよう呼び掛けた。
 駒宮教授は胆江日日新聞社の取材に「ILCのような国際プロジェクトは、国内だけでなく他国の研究者との協力が当初から必須となる。他国政府や関係省庁がILC計画をきちんと認識し、国際交渉に参加できる基礎固めをしなければいけない」と話している。

写真=ムニック議長と駒宮幸男教授
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