人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

生物進化も宇宙の歴史 標本コーナーお目見え(奥州宇宙遊学館)

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tanko 2015-5-20 13:30
 生物の進化も地球や宇宙の歴史――。奥州市水沢区星ガ丘町の奥州宇宙遊学館に、生物の標本展示コーナーが登場した。岩手県立岩谷堂高校教諭の山口成実さん(64)=金ケ崎町西根辻岡=が提供したもので、来館した子どもたちが貝類や昆虫、小動物などの標本、模型を興味深く見ている。同館は天文学だけにとどらまず、さまざまな分野の科学を通じて、物の見方や考え方を育む場となるよう展示や企画の充実を図っていく考えだ。(児玉直人)

 標本を提供した山口さんは高校の生物学教諭を長年務めてきた。2011年3月、県立水沢高校副校長で定年退職したが、再任用を受け現在は岩谷堂高校の教壇に立っている。
 仕事柄、昆虫や植物の標本、小動物のはく製、骨格模型、貝がら、化石、鉱物などを収集。動物の進化や生態の教材に使えるものばかりだが、「普段の授業ではなかなか見せる時間がなく、文化祭で生徒たちの展示に乗じて飾ったぐらいだ」という。
 一昨年、同館で開催した自然体験学習会の講師を務めた山口さんは、同館にコレクションの一部を貸し出した。同館は活用方法を検討し、進化の過程を紹介する資料として、館内の「賢治の部屋」に展示した。
 「賢治の部屋」は、旧水沢緯度観測所と宮沢賢治(1896〜1933)との関係を紹介するスペース。詩人や童話作家として知られる賢治だが、天文学や生物、地質など科学の世界にも関心を示し、文学作品にはその造詣の深さをうかがわせるような文脈や要素が散見される。賢治が関心を寄せていた自然科学の一端を標本展示によって紹介するとともに、生物の進化が宇宙や地球の歴史の中の一部分であることを伝えている。
 山口さんは「リスやウサギといった見た目がかわいい動物、美しい景観などが自然保護の象徴として取り上げられやすいが、ヘビやミミズなども同じ命を持った生き物だという視点で見てほしい。生物が進化の過程で得た形や色にはそれぞれ意味があり、生きるための素晴らしい仕組みが備わっていることを知って貰えたら」と希望している。
 同館は緯度観測所時代の旧本館を使用し、国立天文台水沢キャンパスの敷地内に立地しているという性格から、天文学関連の展示が目立つものの、最近は国際リニアコライダー(ILC)計画や雪の結晶に関する展示も充実。科学全体を広く学べるような環境作りを進めている。
 同館を運営するNPO法人イーハトーブ宇宙実践センターの大江昌嗣理事長(74)は「身近な自然現象や生き物、物質の存在に触れることは、遠い宇宙の世界を考えることにもつながっている。科学や文学、歴史、芸術などさまざまな分野の視点で物事を考えることにより、子どもたちの人間性は豊かに育まれるのではないか」と強調する。
 同館は毎週火曜休館。入館料は200円(高校生以下100円)。問い合わせ(電話)は0197-24-2020。

貝がらや小動物のはく製、昆虫標本などが多数並ぶ奥州宇宙遊学館の展示コーナー
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