人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

課題検討へなお時間(文科省ILC有識者会議)

投稿者 : 
tanko 2015-4-22 8:55
"MEXT Panel of Experts Meeting " (Article Summary)
In English http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ilc/english/news.viewer.html?prm=2015042200

 【東京=児玉直人】 文部科学省の国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)の第3回会合は21日、東京・霞が関の同省3階特別会議室で開かれ、科学的意義やコスト、人材などに関する二つの作業部会が中間報告した。海外との費用負担の枠組みや国民理解の形成、コストの考え方に対しさまざまな課題が示されたことから、今後さらに議論を深める方針。年度内に政府の日本誘致判断の参考材料となる検討結果をまとめる予定だが、十分な議論を尽くしたいとの考えが委員の間に強く、平野座長は「ゴールはまだ決めていない。不確定な部分をより詰めていきたい」と話している。

 有識者会議は昨年5月に設置。国内の理系大学教授ら13人で構成している。早ければ本年度中にも検討結果を取りまとめる。会議内には、科学的意義や投資効果などを協議する「素粒子原子核物理作業部会」と、世界の研究者らがまとめたILCの技術設計報告書(TDR)の内容を検証する「TDR検証作業部会」を設置。誘致する上でのメリットや解決すべき課題を洗い出している。
 3回目の会議は両部会の検討状況について中間報告が行われた。
 このうち素粒子原子核物理作業部会からは、「巨額な経費を要する国際プロジェクトであることから、日本の財政状況を鑑み、国際協力による応分の経費負担を前提に進めるべきだ」「国民や他の科学分野の理解・協力を得る必要がある」「ILC誘致の判断が遅れた場合は国際的求心力が失われる可能性があるため、判断の遅延を招かない体制を整備する必要がある」などの留意点が示された。
 他の学術分野に対する理解構築に関し、法政大学理工学部の岡村定矩教授は「ILCが高エネルギー科学の分野の研究だと思っているうちは、(特定研究分野に巨額予算がつぎ込まれるという恐れから)なかなか抜け出せない。さまざまな分野の基本になっていることを調べるのだという認識を広めないといけない」と指摘した。
 東京大学大学院理学研究科の横山広美准教授も国民理解について言及。「国の財政が厳しく、社会保障の在り方などに関心が向く中、日本の未来にとって夢の投資とできるか考えなくてはいけない。国民目線に立った説明が求められる」と強調した。
 このほか、日本学術振興会の京橋倫久監事は「人材確保や育成に関する方策も考えるべきだ」と提言。既存の2作業部会に加え、新たに人材に関する作業部会を設置することを確認した。
 次回会議は6月に予定。終了後、平野座長は「2年をめどにまとめるとしているが、議論のゴールはまだ決まっていない。やるからにはしっかりとした議論をしたい」と話していた。

写真=ILC国内誘致をめぐる課題点などを議論した文部科学省の有識者会議第3回会合(東京・霞が関)
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