人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC誘致と理解構築 その本気度は?(2014報道回顧)

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tanko 2014-12-24 10:30
 国際リニアコライダー(ILC)誘致に対する日本政府の早期判断が望まれている。一方で市民、国民の理解構築はまだまだ十分とは言えない。
 国際研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」が開設するホームページのニュース欄には時折、「from Tanko Nichi Nichi」というタイトルで本紙の記事が英訳され紹介されている。
 8月も間もなく終わろうとしていたころ、そのニュース欄をたまたま閲覧していたら、画面の一角に「Ichinoseki」と小さく書いてあるのが目に入った。
 「何だこれ?」
 画面を少し動かすと「Oshu」の文字が。しばらくして、それらは国際会議の日程だったと気付く。奥州市が会場となったのは「ILD」と呼ばれる装置に関わる「ILDミーティング2014」だった。
 悔しさと怒りが込み上げた。それは、記者に教えてくれなかったことに対してではない。実はこの3日ほど前、市内で大規模な一般向けILC講演会があったばかりだった。その場でこの話題は一切出なかった。「候補地の地元住民の協力を得てILCを迎え入れる環境づくりを本気で考えているのか」。疑念が湧き上がった。
 国内候補地決定後、初めて北上山地周辺で開かれる国際会議。候補地がどんな場所なのか外国人研究者らに知ってもらおうと、水沢が開催地になったという。
 80人近い多様な国籍の外国人と県外出身の日本人研究者が滞在。たとえ会議が研究者限定だったとしても、ホテルや市街地の飲食店・商店、運輸交通業などに携わる市民が彼らと接する場面は当然にあった。
 そう考えると国際会議の開催は、いち早く市民に周知されるべきだったのではないか。ILC計画の実現に向けた市民理解は、何も講演会や出前授業の開催だけで築かれるものではない。日ごろから市民を意識し、丁寧に心を配っているのかが鍵を握るのだろう。関係者は各地の前例を視察等で学んでいるようだが、研究者・行政サイドと市民サイドとの間に見えない心の壁をつくらないよう努めてほしい。(児玉直人)

写真=水沢を会場に開かれた国際会議「ILDミーティング2014」。10カ国余りから約80人の物理学者らが集まった(9月6日)
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