人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

地域国際化「時間が解決」 斎藤教授(独マインツ大)が水沢で講演

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tanko 2014-11-25 16:10
 ドイツ・ヘルムホルツ重イオン科学研究所の研究グループリーダーで、同国マインツ大学の斎藤武彦教授(43)は24日、水沢区星ガ丘町の奥州宇宙遊学館で講演し、国際リニアコライダー(ILC)実現を見据えたまちづくりや地域の国際化について持論を展開。自身が住む同研究所周辺地域の国際化への歩みを紹介しながら、「外国人を迎えようとする気持ちさえあれば、特別に何かをすることは必要なく、多くは時間が解決してくれるのではないか」と述べた。(児玉直人)

 斎藤教授はILCの概要を解説した上で、国際的な研究施設がまちづくりにどのような効果をもたらすか説明。特に教育に関しては、近隣の中学・高校の理科実験や職業実習の受け入れ現場になり得るという。
 ドイツでの事例を示し「職業実習は科学に限ったものではない。国際研究所の秘書や所長の仕事に密着することで、業務管理や経営に関する感覚を学ぶこともできる」と紹介した。
 ILC計画への期待が高まる一方で、今まで経験したことがない「地域の国際化」に対し不安や戸惑いを覚える人も少なくない。実際、胆江地区でも「外国人の受け入れは大丈夫か」「英語が話せないがどうしたらよいか」という声がある。
 斎藤教授は、所属研究所から近い自身の居住地域の様子を紹介。この地域は、もともと商店も公共機関もドイツ語しか通用しない場所だったという。
 研究所に外国人研究者が多く滞在するようになると、英語が通じるようになったが「地域や研究所が何か特別な取り組みをしたかというとそうではない」と斎藤教授。「5年ぐらいかけて少しずつ住民の意識が変化していった。住民の一員として受け入れる姿勢があれば、多くは時間が解決してくれる。『英語が通じない』などと恐れず、リラックスして迎え入れてほしい」と呼び掛けた。
 神奈川県茅ケ崎市出身の斎藤教授は、原子核構造物理学の専門家で2001(平成13)年からドイツに在住。研究対象はILCと直接関係ないものの、東日本大震災被災地の学校で特別授業をする中で「ILCは次世代を担う子どもたちにとって非常に意義がある」と考え、誘致実現を訴えている。今年9月には岩手大学客員教授にも就任している。
 今回は北上市をはじめ、宮城県や福島県などで特別授業を実施するため東北入り。24日は県立水沢高校での講義に続き、同遊学館での市民向け公開講演会に臨んだ。

写真=国際的なまちづくりについて持論を展開する斎藤武彦教授
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