人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

配偶者の雇用、教育環境── 候補地に望むこと多々

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tanko 2014-9-23 9:50
 世界中の物理学者たちは、北上山地周辺の暮らしに何を望んでいるか――。今月上旬、水沢区内で開かれた国際リニアコライダー(ILC)関連の国際会議「ILDミーティング2014」では、街づくりに関する意見交換会が組み込まれた。配偶者の仕事や子どもの教育面の充実などを求める外国人研究者たち。地方財政が厳しい中、地域振興や交流人口増加のメリットも意識しながら、いかに理想の国際学術研究都市を築くか。受け入れ側の知恵と工夫する力が試される。議論の様子は国際研究者組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)のホームページ上でも紹介され、世界中の研究者の目に触れられている。
(児玉直人)

 ILDミーティングに参加した80人余りのうち約半数が外国人研究者。彼らにとって北上山地は、30年以上も練り続けてきた計画が実現するかもしれない場所。その地で初めて開催することもあり、理系の話題だけで終始するいつもの会議とは違った意味合いも込められていた。
 会議の現地世話人代表を務めた東北大学大学院の山本均教授は「私が知る限り、この分野の国際会議でまちづくりや暮らしをテーマにした議論を繰り広げたのは初めてだ」と振り返る。
 意見交換会では研究者の代表や地域に住む外国市民らが発言した。県若者女性協働推進室の国際交流員アマンダ・クリプスさん(米国出身)は、地域に住む日本人市民の多くは、外国人や多様な文化と接する機会や経験が少ないと説明。「例えば肉類を食べない『ベジタリアン』の概念を日本人が完全に理解しているわけではない。どう対応すればよいか分からないのが実情だ」と述べた。
 単身赴任の概念が存在しない外国人は、一家そろって移住してくる。配偶者の仕事に関しては、現に国際的な研究所が立地する地域でも常々問題になっている。
 水沢区で20年以上生活している米国出身のビル・ルイスさんは、自身がスーパーの従業員として働いたことに触れ「来日した当初は日本語をほとんど話さなかったが、仕事を通じて日本のことをいろいろ学んだ」と回想。配偶者らが地域で仕事を持つのは、地域コミュニティーの中に溶け込む絶好の手段になることを示唆した。
 今回の会議には、妻子を連れて参加した研究者もいた。チェコ科学アカデミーのラシュトヴィチカ・トマースさんは、妻と2歳の息子を連れ来日。会期中に開かれた夕食懇談会の場で胆江日日新聞社の取材に応じ、「長期であろうと短期であろうと、家族と一緒にここに住みたいと感じた。そのためにもインターナショナルスクールは非常に大事だ」と強調した。さらに「素晴らしい自然に囲まれているので、私たちもそこへ気軽に行きたい。運転免許がスムーズに取得できればうれしい」と希望していた。
 外国人研究者の意見に、岩手県科学ILC推進室の千葉彰室長は「彼らの考えを最大限尊重しつつ、いろいろな方策を見つけることが重要だと思う。国際研究都市を形成する上での課題は把握できているので、どのような方法で対応できるか、民間活力をどこに参入させられるかをしっかり考えていきたい」と話している。

 LCCのホームページは
http://www.linearcollider.org/
上部メニューの「NEWS LINE」内で意見交換の様子を英文で紹介している。

写真=まちづくり意見交換会で議論を交わす外国人研究者たち(奥州市役所本庁3階講堂)
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