人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

未来へのアルピニズム ILC誘致夢と現実(8)【日本学術会議ILC計画フォーラムより】

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tanko 2014-8-20 5:40
重点多い事前準備 ILC計画推進の国際体制(駒宮 幸男氏)

 素粒子物理学実験は冷戦時代から国際協力が日常的だった。わが国も多くのプロジェクトに参加し、多くの成果を上げてきた。この分野における国際協力の経験と実績は十分にある。
 さて、国際将来加速器委員会(ICFA)にはこれまで、「ある地域や国が素粒子実験のための加速器を建設した場合、他の地域や国が実験に参加するときは、運転経費などを強要してはならない」という規定があった。
 ところが、加速器の大型化や建設コストの巨額化に伴い、一国や一地域で資金調達能力をはるかに超える金額になっている。主要な加速器は地球規模の事業と位置付け、世界に1基のみ造り、重複を避けることが必須になってきた。
 とりわけILCの推進を考慮するため、ICFAは昨年、ガイドラインを変更した。すなわち「原則は自由に使っていいが、大型の地球規模の施設に関しては、事前に事業のパートナーとの間で運転経費の分担を決めるべきだ」とした。ILCは非常に大きな国際プロジェクトなので、運転、建設、運用の事前交渉は特に重要だ。
 世界は日本の動きに注目している。アメリカは最近、素粒子物理将来戦略(通称・P5)を発表し、ILCを重要なプロジェクトと位置付けた。今までアメリカは自国中心の考えが強かったが、P5ではグローバルな視点が強調されている。
 日本では現在、文部科学省においてILC誘致の是非を検討中だ。世界の研究者界では「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」が、ILC研究所の将来形式を検討する作業部会を作った。
 このILC研究所の運営と組織形態をどうするかという話は極めて重要だ。例えば、世界の物理研究所の機能をILCだけに一極集中させるわけにはいかない。各地の研究所の運営を担保しつつ、ILC研究所の組織運営をやっていくというバランスが必要になる。これまでのさまざまな大型国際プロジェクトの運営形態を精査し、ILCに適した姿を提案してもらう予定だ。
(有本建男氏の講演につづく)

 こまみや・さちお 1952年、横浜市出身。76年、東京大学理学部理学科卒。同部助手を務め理学博士号取得後、渡独。独ハイデルベルク大物理学研究所研究員、米スタンフォード線形加速器センター研究員、東京大学素粒子物理国際センター教授(CERN駐在)などを経て、99年帰国。00年から同国際研究センター長。専門は素粒子物理学実験。LCB委員長なども務める。
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