人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

未来へのアルピニズム ILC誘致 夢と現実(7)【日本学術会議ILC計画フォーラムより】

投稿者 : 
tanko 2014-8-19 5:10
大志抱きつつ現状も見よ 人文社会学の観点から(今田 高俊氏)

 核廃棄物の話に通じることでもあるが「核変換」という技術を生み出せないかという話もある。加速器技術を使い、放射性物質の半減期を縮小できる可能性を模索している。
 ILCの誘致を検討する上で、私は「夢」と「現実」双方から国民的議論をする必要があると考える。
 宇宙の謎を解明するのは、人類にとってまさに「夢」。一方で現実的な面に目を向けると、莫大な費用と多数の人材育成が必要。なかなか難しい問題だが、日本は先進国としてのプライドを持って、何とか合意形成を働きかけてほしい。
 合意形成の進め方はいろいろある。だが、お金で片を付けたり政治的な力を用いたりするやり方は、しばしば人々の心を踏みにじってきた。プロジェクトの素晴らしさや人類にとっての有益さを啓発し、説得する戦略の展開が必要だ。
 今回の学術フォーラムもその一環だろうし、各地ではサイエンスカフェや出前授業なども行われている。そうした取り組みの積み重ねでILC計画の意義はPRできる。しかもILCはリスク中心の話ばかりではなく、夢の話が多い。興味関心は抱きやすい。
 最後に、ILC計画の対立候補になりうるプロジェクトを紹介したい。アメリカ国立衛生研究所(NIH=National Institutes of Health)の日本版をつくろうという構想だ。
 少子高齢化が進み、健康医療問題が大きな関心を呼んでおり、財政的な問題も引き起こしている現実がある。そのような時、国や国民はILCと日本版NIHのどちらを選ぶだろうか。「自分たちの命と健康」なのか、それとも「基礎科学の夢を実現すること」なのか。
 余裕さえあれば両方実現できれば最高だ。しかし、今の状態だとせめぎ合いになってくるのではと感じる。何とか知恵を出し、両立可能な案を考えていくことも必要ではないかと思う。
(駒宮幸男氏の講演につづく)

写真=奥州市などでは、市民向けのILC講座や企画展などが繰り広げられている。今後は、科学的意義や経済効果などプラス面のみならず、費用や人材育成に関する問題、地域が抱える諸課題など現実面にも目を向け考え合うことが、ますます重要になってくる
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