人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国民理解形成が鍵 意義や課題、多角的に(日本学術会議がフォーラム)

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tanko 2014-6-24 7:20
 【東京=児玉直人】北上山地への誘致が期待される素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」について、多様な学問の観点から意義や課題などを探るフォーラムが23日、東京都港区の日本学術会議講堂で開かれた。素粒子物理学者が真の国際研究拠点となるILCの建設意義や現状の取り組みを説明する一方、社会学の専門家は国民理解の形成が重要になると指摘。宇宙の謎を解き明かす「夢」と巨額な予算や人材が求められる「現実」に対応する上でも、候補地周辺や一部関係者で高まっている熱意が全国的にも波及し、広がりを見せる必要性を浮き彫りにした。

 フォーラムを主催した学術会議は昨年、文部科学省の審議依頼を受けILCに関する所見をまとめている。日本でILCを実施し高い成果を挙げるためにも、諸条件を余すことなく検討し、学術界や広く国民の理解を求めることが必要――としている。
 今年5月、文科省内に国内誘致の是非判断に向けた有識者会議が組織された。これを契機にILC計画の意義と課題について、あらゆる観点から探る場を設けた。
 研究者のほか、本県をはじめとする東北の誘致関係者ら200人余りが来場。フォーラムでは、ILC計画推進の最前線に立つ素粒子物理学者3人と、社会学や行政、環境などの専門家3人が登壇した。
 このうち、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構長の村山斉氏(素粒子理論)は、ILCが目指す研究内容などを分かりやすく解説。「ILCには科学者だけでなく、高校生たちも非常に興味を持っている。『一体何に役立つのか』と問われるのは当然かもしれないが、次世代の優秀な人材を育てるという大きな意義があるプロジェクトだ」などとアピールした。
 一方、東京工業大学名誉教授の今田高俊氏(社会学)は、人文社会学の観点から国民の合意形成の在り方などに触れた。「宇宙の謎を探る『夢』は素晴らしいが、莫大な費用や人材が必要という『現実』がある。国民の多くはILCという計画が存在すること自体、よく分からないだろう。いかにプロジェクトの有益性を啓発し、説得するかという戦略が必要だ」と訴えた。
 聴講した奥州市議会ILC特別委の渡辺忠委員長は「まさに、市民に理解をしてもらうことは最も重要なことだ。社会学的な観点からILC誘致と市民生活との関係についても議会として関心を深め、市民にお伝えできるようにしなければいけない」と話していた。
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