人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国際協議へ大きな一歩 “強い支持”報告書に明記(米国の諮問委部会)

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tanko 2014-5-26 16:40
 米国高エネルギー物理学諮問委員会(High Energy Physics Advisory Panel = HEPAP(ヒーパップ))の下部組織「P5(ピーファイブ)」は25日までに、国際リニアコライダー(ILC)計画に対する強い支持を明記した報告書をHEPAPに提出した。報告書は米国の素粒子物理学研究の将来戦略に大きな影響を与えるもので、米政府の今後の判断を待つことになるが、「ILC計画実現に向けた国際協議への大きなステップになる」と関係者は期待している。
(児玉直人)

向こう5年間「何らかの形で関与」

 HEPAPは、米国のエネルギー省(United States Department of Energy = DOE)と全米科学財団(National Science Foundation = NSF)が合同で設置する諮問機関。米国の将来にわたる素粒子物理学研究の方針を協議し、DOEとNSFに答申している。
 HEPAP内に設けられた下部組織「P5」は、素粒子物理学優先順位付け委員会(Particle Physics Project Prioritization Panel)の通称。P5は米国が携わる向こう20年の素粒子物理研究の将来戦略などを協議し、その報告書を22日から2日間にわたりワシントンDCで開かれたHEPAPの会合で提出した。
 報告書の中でILC計画は「物理的な意義が強力である」と高く評価。米国政府の研究予算配分状況に応じた三つのシナリオが示されており、現状予算よりも配分額が増えた場合は「日本国内において実現するならば、米国はILC計画において世界をリードする役割を果たす」としている。
 一方、予算規模が従来通りであっても、研究開発などの分野で役割を果たすべきだとしており、向こう5年間、米国はILC計画に何らかの形で関与すべきだと指摘した。
 P5が作成した報告書は、HEPAPの正式承認を経てDOEに答申される。今後は、HEPAPや米政府が報告書をどう受け止め、判断を下すかに注目が集まる。
 ILC計画の最前線に立つ東北大学大学院の山本均教授は「ILCの科学的意義に対する熱烈な支持が、二度にわたり表現されている。今後5年間、米国はILCを見捨てないという姿勢も示されており、想定されるさまざまな予算状況にあっても『ILCに参加すべし』と言っている。非常に大きな前進だ」と歓迎する。
 ILC計画を推進する研究者らによる国際組織リニアコライダー・コラボレーション(LCC)も、ホームページ上にP5の報告概要などを紹介。米ブルックヘブン国立研究所のマイク・ハリソン教授らは「ILC計画実現に米国が貢献できるようになる第一歩だ」と評価している。
 日本国内では今月、文部科学省がILCに関する有識者会議(座長・平野真一名古屋大学名誉教授)を設置。誘致建設経費の全容と関係国と分担、人材確保、他の国家事業や諸学術分野に影響を及ぼさない予算の枠組みの在り方などを2、3年かけて検討する作業に着手している。
 山本教授は「米国はILCの活動を活発化させるために動いている。もし(報告書で示されている)5年のうちに誘致建設に向けた日本側のめどがつかなければ、日本でのILC実現は難しくなるだろう」と指摘している。
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