人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILC周知へ加速度 若年層、産業界にターゲット(新年度取り組み次々)

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tanko 2014-1-27 5:30
 北上山地が世界唯一の候補地となっている素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」への理解を促す普及活動は、次世代を担う若年層や産業界、沿岸地域などに向けた一層の推進と浸透が求められている。市ILC推進室は新年度、中学生を対象にした出前授業を実施する計画で、既に市内校長会に協力を要請。また市内に拠点を置く民間の誘致団体は、農業を含めた各産業界の関係者や候補地東部の気仙3市町への周知など、行政の枠を超えた取り組みを模索している。
(児玉直人)

■大人数講演から小規模講座へ
 ILCの市民周知は当初、物理研究者らを講師に招いた講演会が中心だった。しかし、ここ最近は振興会や老人クラブなど地域コミュニティー単位の小規模な講座が目立つ。
 市ILC推進室が一昨年2月から今月21日までに受け付けた出前講座は26件。さらに、水沢区が活動拠点の民間誘致団体・いわてILC加速器科学推進会議(亀卦川富夫代表幹事)は、昨年までの2年間で31回に及ぶ講座開催の依頼に応じた。
 同推進会議の場合、行政の枠を超えた講師派遣もあり、北上市や花巻市、遠くは二戸市でも実施した。

■若年層へのてこ入れ
 住民への周知・浸透は順調に見えるものの、講演会や講座の参加者は高齢者や年配男性に偏りがち。同様の傾向は、行政や議会などによる従前の懇談会や説明会などでも長らく指摘されている。
 ILCの建設誘致が正式決定した場合、本格稼働するのは10年ほど先。現在の中高生は社会人となり、その親世代は企業や地域においてリーダー的な立場となる状況を踏まえれば、若年層への周知は不可欠といえる。小学校や図書館での講座開催や青年会議所(JC)など若手実業家らによる講演会も開催されてはいるものの、これまで以上に若年層への周知活動を強化する必要がある。
 市推進室は新年度から向こう3年、市内全中学校の2年生を対象に出前授業を実施する方針。今月22日の市内小中学校校長会で協力を要請し、了承を得た。
 一方、子どもたちの親世代である20〜40代への浸透を図る具体策は、今のところない。児童・生徒やJC会員などは、授業や組織活動の場を利用して説明可能だが「若者個々への直接的なアプローチは難しい」と市推進室の及川健室長。その上で、江刺区の梁川小学校で高学年児童とその保護者を対象に講座を開いた事例を示し「PTAなど親世代が集まる行事を利用した周知も一つの手法だろう」と話す。

■「温度差」生みたくない
 産業界や地域への周知や理解の浸透も重要だ。いわてILC加速器科学推進会議の亀卦川代表は「最初から『われわれには関係ない』と決めつけることで温度差が生じる」と指摘する。
 同推進会議が関与した講演会では、大手を含むゼネコン関係者の参加が多かった。「ILCは農林業や各種サービス業など、さまざまな産業において果たすべき役割が生じるプロジェクト。建設関係に限らず、多くの業種の方々に話を聞いてもらい、一緒に地域の将来を考えたいのだが」と語る。
 同推進会議は新年度事業として、ものづくりやエネルギー、農業といったさまざまな業種に呼び掛け、セミナーを開催する予定。総会での提案に向け詳細を詰めている。
 亀卦川代表がもう一つ気に掛けているのは大船渡、陸前高田、住田の気仙3市町における周知だ。
 気仙地域と同様、甚大な津波被害を受けた宮城県気仙沼市では、目下の復興事業に取り組みつつ、市独自にILC推進協議会を立ち上げ、誘致活動を展開している。菅原茂市長は「海上輸送による資機材の搬入拠点、研究者の居住区としての役割が期待されている。積極的に対応し、ILCを創造的産業復興の起爆剤にしたい」とコメントしている。
 ILC候補地の東側に接する気仙3市町。「国道397号で奥州と結ばれている気仙地域には、港湾機能や豊かな魚介、森林資源など国際都市形成へ発揮できる強みがたくさんある。3市町での周知強化も模索したい」と亀卦川代表。「候補地周辺の一体感が、岩手や東北全体の一体感につながる」と訴える。

写真=昨年11月、水沢地区センターで開かれた「みんな集まれ『ILC応援展』」。ILC完成後の地域社会を担う子どもや若い世代への周知強化が求められる
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