人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国内誘致へ協議本格化(国際交渉・鍵握る政府判断)

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tanko 2014-1-1 11:30
 北上山地が候補地となっている素粒子研究施設「国際リニアコライダー(ILC)」について政府は、新年度一般会計予算案にILC調査検討費5000万円を計上した。可決されれば、文部科学省を中心に国内誘致に向けた具体協議を始める。これと並行し国際交渉の実施も求められるが、日本政府がどの時点で国際社会に交渉開始の意思表示をするかが計画進展の鍵を握る。
 政府がILCの名が付いた予算案を計上するのは今回が初。調査検討を進める組織には、政府のほか素粒子物理学以外の学術関係者も入り、中立的な見地で想定される諸課題とその対応策を協議するとみられる。
 ILC国内誘致をめぐっては昨年、日本学術会議(大西隆会長)が「2〜3年かけ集中的な調査・検討が必要」とし、政府に調査経費などを措置するよう提言。ILCを推進する国際的研究者組織「リニアコライダーコラボレーション(LCC)」で物理・測定器部門の代表を務める山本均氏(東北大大学院教授)は「学術会議の提言に沿った対応で、前向きなステップだ」と評価する。
 学術会議は国内協議と並行し、ILC計画に参加予定の国々と交渉を開始するよう求めている。山本氏は「われわれとしては、海外との交渉開始を日本政府に正式表明してもらいたい。これによって各国が本格参入しやすくなる」と説明する。また「ここで言う表明は、あくまで交渉の開始を指す」と強調。国内の協議、国際交渉の双方のまとまりを受け、初めて最終的な建設判断に至るという。
 研究者サイドは実験装置の詳細設計に加え、北上山地に特化した設計作業を本格化させる。一方で、胆江地区など建設地の地元が絡む動きとして、国際研究都市形成への計画策定が求められてくる。
 協議体制など具体的な中身は決まっていないが、
 山本氏は「ILC建設のゴーサインが出たら、周辺環境整備もすぐに着手できなければいけない」とし、地元における早期の受け入れ態勢構築を促す。
 LCCの最新スケジュールでは、2016(平成28)年には国際交渉や設計作業などを終え、建設への判断が下される。入札など2年ほどの準備期間を経て2018年に建設整備に着手する。
 全長50kmの地下トンネルを掘削し実験設備を備え付けるのに必要な工期は9年。ただ、初期段階では全長約30kmのトンネルで実験する可能性が高く、実際の運用開始は2027年よりも前になるようだ。30kmトンネルでの実験は10年ほど実施するとみられ、その後、全長50kmに延長して実験の高度化を図る。
(児玉直人)
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