人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

「大きな夢 実現へ一歩」  九州との協力連携〜早急な構築求める声も

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tanko 2013-8-24 4:00
 国際リニアコライダー(ILC)の国内候補地に北上山地が選定されたことを受け、地元となる奥州市内でも喜びの声が聞かれた。科学的研究の意義もさることながら、地域振興や教育面への効果に期待を膨らませる市民も。一方で、北上山地同様に誘致活動に力を入れていた九州・脊振山地の関係者の心情を思いやりながら、「共にILCの実現に向けて頑張っていく関係を築かなければ」と話す人もいた。

 「実験でちゃんと本当の考えと、うその考えとを分けてしまえば、その実験の方法さえ決まれば信仰も化学と同じようになる」
 詩人で童話作家の宮沢賢治(1896〜1933)の名作「銀河鉄道の夜」には、このような一文がある。ILCの建設想定エリアである江刺区伊手の阿原山や米里地区は、科学分野にも造詣が深かった賢治が足しげく通った地の一つだ。
 「かつてこの辺りの山を賢治が地質調査した。長い時を経て、ILCの国内候補地となったことに強い縁を感じる」と、米里地区振興会・山崎勝会長(70)は感慨深げ。伊手地区振興会の佐藤絢哉会長(73)は「地域に明るい展望ができた。今から子どもたちへの関連教育を丁寧にやっていくことが大切」と話す。
 ILCに興味を抱く中高生の一人、県立水沢高校理数科3年の軍司啓宏君(17)は「素粒子の世界に関心がある。かなうならば、ILC関連の仕事に携わってみたい」と笑顔をのぞかせた。
 ILC計画自体は10年以上も前からあったが、候補地間での過激な誘致合戦を防ぐため、長らく水面下で検討が進められてきた。そうした経緯を知る一人が「いわてILC加速器科学推進会議」の代表幹事で、元県議の亀卦川富夫さん(73)=水沢区大町。「大きな夢を実現するための一歩を踏み出せた。今後はハード、ソフト双方の現実問題に対応することになるが、受け入れの地元として解決に向け協力したい」と語る。
 一般市民がILCという言葉に触れたのは、ここ数年のこと。市内各地にのぼり旗やポスターが掲げられ、講演会が相次いで開かれるなどして、少しずつ周知されてきた。
 水沢区桜屋敷の主婦菅原由香里さん(50)は「候補地選定はうれしいことで、市も活気づくと思う。一日でも早く建設が正式決定してほしい」。同区中上野町の市臨時職員加藤順子さん(32)は「ILCは大人でもちょっと難しくて分かりづらいと思う。どういうものか簡単に説明してくれれば、子どもたちもより身近に感じられるのでは」と注文する。
 一方、福岡県と佐賀県にまたがる脊振山地周辺の関係者も、同様に誘致へ力を注いできた。だが、ILC計画を前進させる上で避けて通れなかった候補地選定。国立天文台名誉教授の大江昌嗣さん(72)=水沢区川端=は「九州の皆さんも一生懸命活動してきただけに『悔しい』というのが本音であろう」と思いをめぐらす。
 その上で、「工業力やそこで得られたノウハウなど、東北に勝るものが九州にもある。そういう面からも、今後は一緒になってILC計画を推進しなくては。東北の関係者はすぐにも、九州をはじめ日本全国にILC実現への協力関係構築を働き掛けるべきだ」と提言する。
(児玉直人)
写真=市役所本庁の正面玄関に建設候補地の正式決定祝う横断幕を掲げる市職員

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県内外関係者の談話
【達増拓也知事】
 政府においては今回の判断を受けて、諸外国との協議や立地に向けた調査など、日本誘致に向けた取り組みを進めるようお願いしたい。県も関係者などと引き続き緊密な連携を図りながら、ILCの受け入れ態勢の整備等に全力で取り組んで参りたい。

【小沢昌記・奥州市長】
 東北や奥州市の将来を考える上で、まさに歴史的な出来事。ILC計画が実現に向けて大きく前進した。世界に敬愛され、人類の発展に貢献する日本を目指し、これまで以上に関係者と一丸となって取り組んでいく。広くご支援とご協力を賜りたい。

【高橋由一・金ケ崎町長】
 北上山地を評価いただいたことは、当地域にとって大きな前進。ただし、今回の評価結果は最終決定ではないことから、今後とも政府への働き掛けや受け入れ態勢の整備など、岩手・宮城両県や関係市町村・団体と一体となって取り組んでいきたい。

【千葉龍二郎・奥州商工会議所会頭】
 東北全体が一丸となって取り組んだ大きな成果であると認識している。今後とも関係団体などと連携し努力していくが、日本政府が早期に誘致を決断し、東北復興のシンボルとしてのILCが一日も早く実現することを期待したい。

【長谷川閑史・経済同友会代表幹事】
 今後は脊振山地との役割分担を含めて、日本全体としての対応を早急にとりまとめ、関係者一丸となってオールジャパンでの誘致を推進すべき。そのためには研究者や候補地の関係者だけではなく、政治のリーダーシップが不可欠である。

【高橋真裕・岩手経済同友会代表幹事】
 ILCの国内候補地として北上山地が決定したことは、本県ひいては東北にとって大変喜ばしいこと。今後は、わが国としての誘致決定に向け、国内外の多くの方々に日本誘致の意義を理解してもらえるよう努力しなければいけない。
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