人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

国内候補地は北上山地  研究拠点立地場所・新幹線沿線を推奨

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tanko 2013-8-24 4:00
 素粒子物理学の実験施設・国際リニアコライダー(ILC)について、研究者で組織するILC立地評価会議(共同議長=山本均東北大教授・川越清以九州大教授)は23日、国内建設候補地を北上山地に選定したと発表した。強固な花こう岩岩盤帯の地質や周辺地形が、施設の拡張性や工期、コスト面で九州・脊振山地よりも優位と判断。委員8人が全員一致で結論を出した。研究拠点となるメーンキャンパスの位置については、東京・仙台へのアクセスや生活の利便性に考慮し、JR東北新幹線沿線への立地を強く求めた。今回の決定は世界に1カ所とされる建設候補地を実質的に絞り込んだことを意味するが、今後は国内外の政府機関も交えた交渉などを進める必要がある。建設費は約8300億円と膨大で、候補地の地元のみならず国民の幅広い理解を得るなどクリアすべきことは多く、建設実現までにはまだ時間を要する。日本政府がILCの意義を認め、誘致へ交渉のリーダーシップを発揮するのかどうか。その行方に関心が集まる。

 立地評価会議は、地質などの「技術評価」と、住環境や交通アクセスなど「社会環境基盤評価」の二つの分野に分け、候補地の選定作業を実施。両分野の専門委員会を設け、データの精査と吟味、現地視察などを行ってきた。
 ILCの心臓部ともいえる、加速器が設置される地下の直線トンネルの延長は、将来の実験施設拡張を見据え50kmと定めている。北上山地は南北に細長く花こう岩帯が広がり、余裕をもった設計や建設が可能。地下トンネルまでのアクセストンネルの長さも脊振山地よりも短く、コストや工期面からも優位と判断された。脊振山地は、想定ルートの直上または近くにダム湖があること、都市部の下を通過することなどがネックとなった。
 一方、社会環境基盤では大都市・福岡市を擁する脊振山地が優位だったものの、技術評価で生じた差を覆すまでには至らなかった。
 東京大学で行われた記者会見で、立地評価会議の上部組織・ILC戦略会議議長の山下了東大准教授は「今回の評価については重い責務を感じている。評価に当たり両地域の方々には非常に多くの理解と尽力をいただいており、結果についての説明は十分に尽くしたい」と述べた。
 国際的な研究者組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」最高責任者のリン・エバンス氏(ロンドン・インペリアルカレッジ教授)のメッセージも読み上げられ、「日本にとって、リーダーシップを発揮し第一級の研究施設を設立できる素晴らしいチャンスだ。科学的意義のみならず、若い世代の夢をかきたて、人種や宗教にも左右されない真の国際研究所となるだろう」と期待を込めた。
(児玉直人)

国際リニアコライダー(ILC)
 物質の成り立ちや宇宙の起源などの研究を目的に、世界で1カ所だけに建設される素粒子物理学の実験施設。2020年代の完成を目指している。「リニア」は「直線の」、「コライダー」は「衝突型加速器」を意味する。肉眼では確認できない素粒子の一種「電子」「陽電子」を、地下の直線トンネル内で光の速度まで加速させ衝突させる。両方の素粒子を光速状態にする装置を「加速器」と言う。衝突地点には高さ14〜16mにもなる巨大な測定器を設置。衝突によって電子や陽電子以外の素粒子が生成され、その性質を調べることで、物質の成り立ちや宇宙誕生の謎などに迫る。

写真=ILCの地下直線トンネルと、その周辺に構築される研究都市のイメージ((c)Rey.Hori/KEK)
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