人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

特集「東北の強みは何か」 その1 (5月30日開催のパネルディスカッションから)

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tanko 2013-6-30 5:00
 国際リニアコライダー(ILC)の北上山地誘致を実現する上で、東北にはどんな強みや潜在能力があるか――。5月30日に東京都千代田区大手町の経団連会館で開いたシンポジウム(東北ILC推進協議会主催)で、行政や都市計画、人材育成にかかわる有識者4人が、首都圏の企業関係者らを前に意見交換。東北の持つ地域性や魅力をアピールした。国内候補地一本化が迫る中、山村が持つ既存機能を生かしたまちづくりや人材育成面への効果などについて持論を展開した。


パネルディスカッション
「ILCを核とした科学技術創造立国と東北のポテンシャル」
【発言者】
達増拓也氏…岩手県知事
村井嘉浩氏…宮城県知事
大村虔一氏…NPO法人とうほくPPP・PFI協議会長(元東北大学大学院教授)
内永ゆか子氏…(株)ベネッセホールディングス取締役副社長兼ベルリッツコーポレーション名誉会長
【司会進行】
吉岡正和氏…東北大学・岩手大学客員教授

5月30日 経団連会館「ダイヤモンドルーム」東京都千代田区大手町)にて

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 吉 岡…ILCのように非常に魅力的な要素を含んだ国際計画の場合、普通はいくつかの国や地域が奪い合うはずだ。しかし、欧米やアジアにおいても日本誘致を支援してくれるという、誠に希有な状況が生まれている。今日のテーマはILCと日本再生だが、初めに北上山地がある岩手県の達増知事からご発言いただきたい。

 達 増…日本の各地で、地域資源の発掘が模索されている。岩手の久慈市が舞台となっているNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が人気を集めている。北限の海女が登場するあのドラマは、地域に“潜り”、地域資源を掘り出すことの素晴らしさ、その人材の必要性を描いている。
 ILCは北上山地の固い岩盤という地域資源を活用し、地域を世界に向けて開いていくプロジェクト。地域の進むべき方向性に合致している。地下に“潜り”、人類の英知という宝を掘ってくるとも言えるだろう。
 世界遺産の平泉は、藤原清衡氏が戦乱のない平和な社会を実現するため、この世に浄土を築こうとした。国際社会の協力の下に作られるILCは、平泉の理念の延長線上にあると言っても過言ではない。
 具体的な話としては、関係地域の産学官と研究所が有機的に連携し、波及効果を確かなものにしていく必要がある。
 また、ILC周辺には外国人研究者と家族が居住し、地元住民も彼らと接触交流する機会が増え、地域の国際化が進む。このことは、東北から国際化社会に適した人材を生み出すことにもつながる。
 一連の対応は行政だけでは不可能だ。しかし、東北の場合は大学や経済団体、行政などで構成する東北ILC推進協議会が存在する。産学官民一体の推進組織が機能していることは、今の東北にとって強みであろう。

 吉 岡…ILCトンネルが最大の長さになった時、その南端部は宮城県の気仙沼市に達する。宮城には研究を支える東北大学や、東北一の都市である仙台市がある。次はその宮城県の村井知事にお願いしたい。

 村 井…東日本大震災以降、宮城県も世界中から物心両面の支援をいただいた。ILCが東北に来るとなれば、震災支援に対する大変な恩返しになる。
 その前に、候補地選定については客観的、科学的に日本のどこがいいのか、しっかり検証してもらいたい。もし「東北がいい」となれば、政治力が介入して覆されるようなことがないようブロックする。もちろん、東北とは別な場所に決まったら、私たちはそちらを応援しなければいけない。ゆえに、研究者の皆さんには、しっかりとした評価によって候補地を決めてもらいたい。
 ILCでは、単にヒッグス粒子やダークマター(暗黒物質)の謎を解くばかりではなく、いろいろな分野に効果が派生する。米国のシリコンバレーのような姿になれるよう、東北全体で一生懸命にILCを支えたい。

 吉 岡…今まさに、日本のILC立地評価会議(研究者が責任主体)で、技術や社会環境を含めて協議している。その社会環境について、東北における検討作業を中心的にやっているのは大村さんだ。今までの調査結果などを含めた見解を示してほしい。

 大 村…ILC建設候補地のほとんどが、奥州市と一関市。南の一部が気仙沼市までいく。この3市はかつて、小さな村々だった。それが、市町村合併を繰り返し今の姿になっている。
 このエリアに、どのような形で人が住んでいるか見てみると、「山地」とはいえ、標高200m以下の場所を中心に、昔の基礎自治体(町村時代の中心部)の名残を知ることができる。特にJR大船渡線沿いには、摺沢や千厩といった特にしっかりとした町ができている。こうしたかつての基礎自治体の姿を壊さずに、まちづくりの基盤にできないか考えている。
 「東北には大都市並のまちは形成できない」と思われている。だが、調べてみると、北上山地に点在する基礎自治体があった場所には、学校がちゃんとある。もちろん、人口が減少し続けているという現実問題はあるが、公的な施設の存在がある程度維持されている。これら既存の施設をどう生かすかが大事だ。
 ILCが実現した場合、外国人の子どもたちも多くなると考えられる。既存の施設を使い、どんな教育をしていくのか――ということも考える必要が出てくる。地域にとってはもちろん、文部科学省にとっても大きなテーマだ。
 同じことは医療施設にも言える。学校同様、各地に点在している。今、地域の医療施設をどう持続させるかが課題となっている。こういう施設を維持する上で、人が増えることは大歓迎だ。ただ、一方で外国人も一緒に使ってもらうのか、それとも新たに別な施設を設置するのかという問題も出てくるだろう。
 私はILCが来るからと言って、何でも新たに構築する必要はないと感じる。山村が保ってきた地域基盤を用いて、おおらかな研究環境を築くことに利点があると思う。研究者らはメーンキャンパスに近い場所に住むだろうが、将来的には既存の集落にも溶け込むことが実現できるようにしたほうがいい。
 単純に「国際研究都市をつくる」というのではなく、人口減少が著しい地域を再生させること、そして震災復興などの課題とが、ILC建設の過程の中にうまく合致させる必要がある。
 そのためには、民間と協力していくやり方を全面的に出していくべきだ。そのことによって、日本再生の東北モデルができると思う。

写真=発言者の達増拓也氏、村井嘉浩氏、大村虔一氏、内永ゆか子氏(右から)
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