人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

建設実現へ一歩前進(技術設計報告書が完成)

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tanko 2013-6-13 8:10
 北上山地などが有力候補地となっている、素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の「技術設計報告書(TDR=Technical Design Report)」が12日、完成した。ILC建設に必要な詳細事項をまとめた書類で、ILCの建設実現に向け、一歩前進したことを意味する。同日、東京大学で完成記念セレモニーが開かれ、各国の素粒子研究者が出席。北上山地を擁する本県からも、奥州市の小沢昌記市長らが参加し、ILC計画前進に向けた節目を祝った。
 TDRは、国際共同設計チーム(GDE=Global Design Effort)と実験管理国際組織(RD=Research Directorate)によって作り上げられた4巻5冊組で構成する書類。ILCで行われる研究の内容や、そのために必要な実験装置や設置場所の構造など専門的な事柄が詳細に記されている。昨年12月に草案が完成していたが、建設コストに関する事柄を反映したり細かな修正を施したりして、完成版刊行にこぎつけた。
 東京大で開かれたセレモニーには、GDEとRDの活動を引き継ぐため2月に発足した国際研究組織「リニアコライダー・コラボレーション(LCC)」の最高責任者リン・エバンス氏と、LCCの監督機関である「リニアコライダー国際推進委員会(LCB)」の駒宮幸男委員長らが出席。エバンス氏は「世界中の科学者が携わった設計が完成し、『夢』から『現実』に変わる時が来た。あとは先に進むという決断をするだけだ」と述べた。
 セレモニーの様子はインターネットで生中継され、中国や韓国、インドといったアジア諸国の素粒子研究者もTDR完成を祝福した。
 TDR完成でILCは建設作業開始へと近づいたことになる。国内外の研究者間では、日本への建設を有望視する声が急激に高まっている。北上山地と北九州の脊振山地の2カ所を有力候補に挙げている日本の研究者たちは、7月末にも一本化する方向で詰めの作業を行っている。候補地が一本化された後も、日本政府による誘致の正式表明や費用負担に関する国際協議など、いくつかの関門が待ち構えている。
(児玉直人)
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