人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

J-PARC放射能漏れ事故の教訓をILCに 佐貫准教授(東北大)が指摘

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tanko 2013-6-5 9:50
 5月23日に茨城県東海村の「J―PARC」で発生した放射能漏れ事故と、北上山地への誘致が期待されている国際リニアコライダー(ILC)との関係について、東北大大学院理学研究科物理学専攻の佐貫智行准教授は4日、県議会の新産業創出調査特別委員会(郷右近浩委員長、委員11人)の会合の中で、施設や実験内容の違いについて説明。ILCにおいて同様の事故が起きる可能性は極めて低いとした。その上で「今回の事故で得た教訓は(ILCにも)生かしていく必要がある」と述べた。

 会合は、同委員会による県内調査の中で開かれた。一関市役所大東支所を会場に同委員会メンバーと奥州、一関両市の誘致担当者らとの質疑や意見交換が行われ、学識経験者として調査に同行した佐貫准教授も出席した。
 会合の中で久保孝喜氏(北上、社民党)は、「今回の事故はILC誘致に影響しないと思うが、リスク面をきちんと説明する姿勢が必要。『住民から聞かれませんでした』ではなく、市民が抱く漠然とした不安にも積極的に対応すべきではないか」と述べた。
 両市担当者らもリスク説明の重要性を認識。一関市の田代善久副市長は「行政の人間が『大丈夫だ』と言っても説得力がない。専門知識がある科学者による説明会のようなものが開ければ」と話した。
 佐貫准教授は「『加速器』と文字に書いてしまえば同じ装置に見られてしまうが、J―PARCの加速器とILCの加速器は全然違う」と説明。J―PARCの装置の場合、スイッチを止めてから放射線の影響が収まるまで数時間は、遮へい管理区域の中に入れないが、ILCの場合は切った直後から中に入れるぐらい放射線の影響は小さいという。
 J―PARCのような事故が起きる危険性はILCでは極めて低いというが、佐貫准教授は「想定外のトラブルというものが起きないためにも、事故の教訓は生かしていかなければいけない」と強調。また個人的見解とした上で「J―PARCの装置も、異常を察知して一度停止した。しかし、それを再び動かしてしまった。すぐに実験を再開したいという気持ちを抑えるべきだった」と話していた。
 このほか佐貫准教授は「『放射線』と『放射能』は全く意味が違う。もし(住民に向けて)説明する際はこの辺も十分に理解した上でお願いしたい」と述べた。
(児玉直人)
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