人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

政府事業仕分け ILC関係者、困惑

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tanko 2009-11-27 19:50
 政府の「事業仕分け」で科学技術予算の削減が相次いだことで、学界などから異論が出ている。胆江地区の関係者も、こうした議論を注視。背景には、今年に入り素粒子実験施設である「国際直線衝突加速器(ILC=International Linear Collider)」の一候補地に、北上高地の名が浮上したことがある。市民向けのセミナーが開かれ、経済団体が計画実現に向けた啓発事業促進を提唱するなど、ILC構想に関心が高まっている。仕分け作業に一定の理解をしつつ、「将来的に必要な投資はあってしかるべきだ」との声が聞かれる。
 ILCは、あらゆる物質を構成する最小単位「素粒子」の研究をする大規模な地下実験施設。素粒子の一種、電子と陽電子を超高速で衝突させ、宇宙誕生の謎を解明する。市民生活との直接的関連が薄い「基礎科学」を扱う施設で、研究内容も専門性が高い。
 しかしながら、国際研究機関が立地することは、科学の進歩への寄与にとどまらない。施設建設に必要な技術の確立、人材育成、地域振興、企業立地など本県が受ける恩恵も大きい。
 今回の事業仕分けで、ILCについて直接言及した議論はなかったが、類似の科学技術事業の予算が無駄と判断されたことで、学界や経済界からは異論が相次いだ。
 25日夜には東京大学で、日本人ノーベル賞受賞者が緊急声明を発表。「将来に禍根を残す」と指摘した。
 昨年、ノーベル物理学賞を受賞した小林誠氏(素粒子理論)もILC事業に深くかかわりがある。緊急声明の会見で、「個別の事業のネガティブ面(負の面)だけを取り上げ、予算を縮減するという結論は短絡的では」と疑問を呈した。
 国立天文台名誉教授で、奥州宇宙遊学館館長を務める大江昌嗣氏=水沢区川端=は、「科学研究が軽視されれば、物づくりの基礎もなくなり、何もできなくなる。近隣国は逆にこの分野を強めてきている」と話す。
 奥州商工会議所(千葉龍二郎会頭)は、地元経済団体としてILC構想の実現を推進。菅原新治事務局長は、「ILCのような科学技術、研究部門への国の支援は推進すべきだ。たとえ研究がうまくいかなくとも、その過程で得られた成果や技術がきっかけとなり、さまざまな“副産物”をもたらすことも考えられる」と主張する。
 ただ、事業仕分けそのものについては否定的ではない。「実際、科学予算の中身や使途も、われわれに見えない部分が多い。必要なものと、そうでないものを分析するという点では重要な作業だ。仕分けの結果や激しい議論ばかりに関心がいってしまいがちだが、単純に『科学技術は無駄』という判断を下しているわけではないと思う」と話している。
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