人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

進捗停滞に危機感か(岩手、宮城のILC建設地域関係団体が期成同盟会設立へ)

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tanko 2023-2-7 19:50
 素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の誘致実現を目指している岩手、宮城両県の自治体などは8日、「(仮称)ILC実現建設地域期成同盟会」を設立する。本県南部の北上山地が有力候補地に選定され今年で10年。さまざまな情勢変化やプロジェクト推進に対する慎重論もあり、当初想定を上回る形で誘致運動は長期化。新型コロナウイルスの影響もあってここ数年は進捗(しんちょく)が停滞している雰囲気さえあり、直近の県民意識調査でもニーズ(必要性)は他施策より低調だ。自治体首長や議員、経済団体トップらがこぞって誘致運動をリードしてきた手前もあり、期成同盟会を立ち上げて“地元の熱意”をあらためて示す狙いがあるとみられる。
(児玉直人)

 期成同盟会設立発起人には、倉成淳奥州市長や高橋寛寿金ケ崎町長を含む北上山地周辺の自治体首長と誘致団体の代表ら13人が名を連ねている。倉成市長は代表発起人(5人)の一員でもある。設立総会は8日、一関市の一関文化センターで開かれ、規約や役員選出、事業計画の各議案を審議し、承認される見通し。同盟会事務局は一関市ILC推進課内に設置される予定だ。
 奥州市ILC推進室の二階堂純室長によると「期成同盟会設立の話は、早い段階からあった」という。既存誘致団体、国会や関係自治体の議員連盟、ILC計画を地域関係者に提唱してきた素粒子物理学者らとの共通理解形成、調整などに時間を要した。既存誘致団体との違いについて、二階堂室長は「建設候補地により近い自治体や関係団体を構成メンバーとすることで、地元の熱意を政府に伝える意味合いがある」と説明する。
 ILC計画の存在は2009年ごろ一般県民に知られるようになった。推進派の素粒子物理学研究者らによる講演会などによって周知が進められた。13年には、研究者らにより北上山地に国内候補地を一本化。早期実現への機運が一気に高まった。
 しかし、日本学術会議や文科省ILC有識者会議における協議の中で、巨額な建設・運営コストの国際分担、プロジェクトの進め方、国民理解などに対する課題が度々指摘された。一部の地元住民からは、施設の安全性や教育現場を利用した周知活動に疑問を呈する声も上がった。
 県が昨年まとめた最新の「県施策に対する県民意識調査」では、ILC誘致を見込んだ外国人研究者受け入れに関しては、重要度が他施策より大幅に低く、満足度も平均以下という結果が得られている。
 こうした背景もあって、北上山地に候補地が一本化されたものの、地元誘致団体が思い描いていたようなスピード感でスケジュールが推移していない。「今年が正念場」と、高揚させる言葉が何度も繰り返されてきた実態がある。
 当初は本年度中に日本誘致を前提とした準備研究所(プレラボ)開設も想定されていたが、有識者会議の慎重論もあって、研究者側は戦略の練り直し。重要度の高い技術課題の解決などを優先的に進める新組織「ILCテクノロジーネットワーク(ILC TN)」を立ち上げている。研究者サイドの取り組みは、北上山地周辺地域に直接見える形で行われているわけではないため、進捗感が乏しいとの雰囲気になっているとみられる。
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