人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

科学と社会、望ましい関係探る(天文台水沢を事例に、5日都内で)

投稿者 : 
tanko 2022-11-1 12:10

写真=ACADEMIJANの仲間らと活動する菅原風我さん(左)

 科学と社会との関係について、国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の活動事例から考える対話企画「みんなで紡ぐ!未来のブラックホール研究」が5日、都内で開かれる科学イベント「サイエンスアゴラ2022」の中で繰り広げられる。市出身の会社員、菅原風我さん(27)=都内在住=が参加する科学コミュニケーション実践グループ「ACADEMIJAN(アカデミジャン)」が考案した。当日は本間所長も登壇。ブラックホール(BH)研究を紹介しながら、持続可能な基礎科学研究を実現するためのアイデアを来場者と共に考える。
(児玉直人)

 サイエンスアゴラは、科学技術振興機構(JST、橋本和仁理事長)が主催し、2006年に始まった。今年は東京・台場青海地区のテレコムセンタービルを会場に、4日から3日間開催。公募により選定した39のステージ企画と73のブース展示を実施する。
 ステージ企画に応募したACADEMIJANは、北海道大学の科学コミュニケーター育成講座「CoSTEP(コーステップ)」の第16期修了生有志で結成した。
 都内のIT関連企業に勤務する菅原さんもメンバーの一人。東京大学大学院在学中には科学技術社会論を学ぶなど、科学と社会の在り方を考えるサイエンスアゴラの開催趣旨に近い分野を研究対象にしていた。
 予算や人材の不足による日本の純粋科学、基礎科学が岐路に立たされている状況について、在学中から関心を寄せていた菅原さん。関連するニュースに触れる中で、実家近くの同観測所も例外でないことを知った。史上初のBH撮影に貢献し、社会の脚光を浴びた同観測所であっても、施設運営や人材育成に必要な予算の安定確保に影響が出ているという現実に直面していた。
 そんな苦境の中、観測所の外部にも目を向けた挑戦を続ける本間所長の姿勢に、菅原さんは注目。同観測所の取り組みを事例に、基礎科学全般が抱える重要課題について、サイエンスアゴラの場で問題提起できるのではと考えた。
 仲間と共に構想を練り、提出した企画は無事採用。さらにサイエンスアゴラ2022推進委員会が決める注目企画(12件)にも選ばれた。委員の一人は、研究者と市民が同じ目線で考える上で不可欠な企画だと評価。別の委員からは、施設存続を強調しすぎないようにすれば、より多様な価値観や意見も得やすくなり、結果的に既定概念を超えたより良いアイデアが生まれる――との助言も受けた。
 「一つ一つの取り組みは小さなことであっても、さまざまなことにチャレンジしている本間所長の姿勢がとても大切だと感じる」と菅原さん。本間所長は「予算の話は基礎科学や大型科学の共通課題で、避けては通れない話。基礎科学をどう持続的に支えていくか、市民の皆さんと一緒に考えられる非常に貴重な機会を与えていただきありがたい」と語り、来場者らとの対話や得られる成果に期待を寄せる。
 対話企画「みんなで紡ぐ!未来のブラックホール研究」は午後2時半開始。事前申し込みをすればオンライン配信の視聴もできる。
 サイエンスアゴラには、県ILC推進局もブースを出展。素粒子実験施設、ILC(国際リニアコライダー)計画をPRする。
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