人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ブラックホール解明に挑む田崎さん 市内事業所が正規雇用(天文台水沢、若手活躍の環境確保)

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tanko 2022-6-5 18:40

写真=半導体製造装置メーカーの正社員に採用された後も、BH研究に携わることになる田崎文得さん

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)で巨大ブラックホール(BH)解明に挑んでいる研究者の田崎文得さん(36)が今年4月、江刺に事業所を置く半導体製造装置メーカー、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)(本社山梨県韮崎市、佐々木貞夫社長)に正社員として採用された。全国の研究機関などでは、優秀な人材が不安定な雇用形態に置かれ続ける「ポスドク問題」が深刻化。同観測所も頭を悩ませており、若手が安心して活躍できる環境を確保しようと、同社と検討を進めてきた。田崎さんは引き続きBH研究にも携わるといい、「半導体製造装置が安定して稼働し、最高のパフォーマンスを出せるかどうか、BH撮影の画像解析で培ったノウハウを生かして取り組みたい」と意気込んでいる。
(児玉直人)

 2019年、巨大BHの撮影成功を初めて公表した直後、同社関係者が観測所を訪問。本間所長(50)と交流を重ねるうちに、若手研究者の活躍と安定雇用を確保する策の一つとして、同社が田崎さんを採用する方針がまとまった。
 田崎さんは京都大学大学院博士課程修了後、2014年4月から同観測所の研究支援員、特任研究員としてBH研究に従事。いずれもポストドクター(博士研究員、ポスドク)と呼ばれる任期付きの職だった。
 博士課程修了者には就職のほか、ポスドクとして大学や研究機関に所属し、教授職や民間就職へのステップアップを狙う道がある。
 ところが、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査によると、国内のポスドク延べ1万5590人(2018年度現在)のうち、7割超の1万1101人が次年度もポスドクを継続。大学や研究機関の正職員ポストに空きが生まれず、民間企業もポスドク採用に消極的という実態があり、雇用形態的に身分が不安定なポスドクを続けている。NISTEPによると、2020年度にポスドクを採用した企業は、回答した1891社の0.6%にとどまった。
 同観測所では、国内外の研究機関と共同利用している観測装置の維持管理を最優先に予算投入。巨大ブラックホール(BH)撮影の成功で脚光を浴びている同観測所だが、国の基礎研究予算が頭打ち状態にある中では、若手研究者を安定雇用する余裕がない。
 日常的な経費削減のほか、市民から寄付を募るなどあらゆる策を講じている。今回の田崎さんの民間雇用もその一環だ。
 田崎さんは2020年から嘱託社員として月12日は同社に勤務し、それ以外の日を研究などに充てていた。昨年末、同社の長谷部一秀・常務執行役員(52)が中心となり、正社員としての採用を推挙。BH研究も業務の一つとして認めるようにした。同観測所と同社は共同研究契約を年内にも締結する。
 長谷部常務は「大学との共同研究はあるが、天文学という異分野とのコラボレーションは初めての試み。東北事業所の近くに天文台があったというロケーションと、人と人とのつながりがあって実現できたこと」と語る。
 本間所長は「われわれの業界では、企業に就職するということは研究者としての道を諦めるのに等しかった。天文学の知識が社会に役立ち、優秀な研究者が活躍できるといういいモデルケースになれば」と期待を込める。
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