ILC計画、国内誘致前提では困難(有識者会議、まとめ骨子案を協議)
- 投稿者 :
- tanko 2021-12-22 9:20
素粒子実験施設・国際リニアコライダー(ILC)計画に対する誘致課題などを検証している文部科学省ILC有識者会議(座長・観山正見岐阜聖徳学園大学長、委員14人)は21日、第5回会議を開き「議論のまとめ」を作成するための骨子案を協議。焦点となっているILC準備研究所(プレラボ)の設置については、素粒子物理学者が示した日本誘致前提の内容では「先に進めるのは難しい」とし、工学設計や実証実験などを進め、機が熟すかどうかを見極めながらより高いステップに進むやり方が望ましいとの意見が相次いだ。
(児玉直人)
ILCは、宇宙誕生の謎や物質の成り立ちの解明など素粒子物理学研究を主目的に計画されている大型実験施設。計画を推進する研究者コミュニティーの中では、本県南部の北上山地を建設候補地と位置付け、周辺自治体や経済団体などと連携した誘致活動、広報普及事業を展開している。
一方、文科省は有識者会議や日本学術会議などの審議結果に基づきながら、米国や仏独英の欧州3カ国の関係政府機関と事務レベルで意見交換を行っている。ただ、他分野の研究者も交えた有識者会議や学術会議での議論は、研究内容の意義は認めつつ、ILC計画の妥当性に疑問を投げ掛ける声が多い。文科省が欧州3カ国と複数回実施した意見交換でも、欧州側からは財政難などを理由に消極的な姿勢が強く示された。
第5回会議では、これまでの議論の集大成となる「まとめ」の骨子案を協議。焦点となっているプレラボの設置について、大阪大核物理研究センター長の中野貴志氏は「設置が必要だという機運が十分に高まっていない。いきなり230億円を必要とする規模の組織や取り組みをするのではなく、しっかりと中間目標を設定し、こぢんまりとしたところから進めたほうがいい」と述べた。
同日の会議に欠席した東京大教授の横山広美氏は、書面で意見を提出。素粒子物理学が果たしてきた役割や研究の継続性に期待を込める一方、生命科学分野における取り組みを例に「困難な時にこそ、無理に話を進めようとしないことが、当該分野の信頼を保つ上で重要だ」と指摘した。
関西学院大理事の神余隆博氏は「現状では欧米各国の財政状況などから鑑み、すぐにILCができるとは思わない。推進するなら小さなステップで進めてはどうか」と提言した。
同日は国民理解推進の関連で、推進側研究者が奥州市や一関市などで開かれた住民説明(リスク説明)の開催状況を提示。東京大の浅井祥仁教授は「放射線の心配がないことや、地震対策などの理解が進んでいる」と説明した。
このことに、科学ジャーナリストの東嶋和子氏は「実際に参加者から理解できたなどの声を聞いたのか」と質問したが、浅井教授は「(説明会の)現場での反応を見てそう感じた」と述べた。観山座長は「感想などの調査をしていないのには驚いた。どの程度理解が浸透し、期待感があるのかを示さないといけないのでは」と指摘した。
次回会議で「まとめ」を成案し、会議を集結する方向だ。
(児玉直人)
ILCは、宇宙誕生の謎や物質の成り立ちの解明など素粒子物理学研究を主目的に計画されている大型実験施設。計画を推進する研究者コミュニティーの中では、本県南部の北上山地を建設候補地と位置付け、周辺自治体や経済団体などと連携した誘致活動、広報普及事業を展開している。
一方、文科省は有識者会議や日本学術会議などの審議結果に基づきながら、米国や仏独英の欧州3カ国の関係政府機関と事務レベルで意見交換を行っている。ただ、他分野の研究者も交えた有識者会議や学術会議での議論は、研究内容の意義は認めつつ、ILC計画の妥当性に疑問を投げ掛ける声が多い。文科省が欧州3カ国と複数回実施した意見交換でも、欧州側からは財政難などを理由に消極的な姿勢が強く示された。
第5回会議では、これまでの議論の集大成となる「まとめ」の骨子案を協議。焦点となっているプレラボの設置について、大阪大核物理研究センター長の中野貴志氏は「設置が必要だという機運が十分に高まっていない。いきなり230億円を必要とする規模の組織や取り組みをするのではなく、しっかりと中間目標を設定し、こぢんまりとしたところから進めたほうがいい」と述べた。
同日の会議に欠席した東京大教授の横山広美氏は、書面で意見を提出。素粒子物理学が果たしてきた役割や研究の継続性に期待を込める一方、生命科学分野における取り組みを例に「困難な時にこそ、無理に話を進めようとしないことが、当該分野の信頼を保つ上で重要だ」と指摘した。
関西学院大理事の神余隆博氏は「現状では欧米各国の財政状況などから鑑み、すぐにILCができるとは思わない。推進するなら小さなステップで進めてはどうか」と提言した。
同日は国民理解推進の関連で、推進側研究者が奥州市や一関市などで開かれた住民説明(リスク説明)の開催状況を提示。東京大の浅井祥仁教授は「放射線の心配がないことや、地震対策などの理解が進んでいる」と説明した。
このことに、科学ジャーナリストの東嶋和子氏は「実際に参加者から理解できたなどの声を聞いたのか」と質問したが、浅井教授は「(説明会の)現場での反応を見てそう感じた」と述べた。観山座長は「感想などの調査をしていないのには驚いた。どの程度理解が浸透し、期待感があるのかを示さないといけないのでは」と指摘した。
次回会議で「まとめ」を成案し、会議を集結する方向だ。