人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

プレラボ設置容認と誘致前提切り離し案(ILC有識者会議、 委員見解分かれる)

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tanko 2021-10-19 8:40
 素粒子実験施設、国際リニアコライダー(ILC)計画に関する文部科学省の有識者会議(座長・観山正見岐阜聖徳学園大学長、委員14人)の第2期第3回会議は18日、オンライン方式で開かれた。ILC準備研究所(プレラボ)創設を巡る討議の中で容認する意見があったのに対し、観山座長ら複数の委員は慎重論を主張。日本誘致を前提とする現状の推進方針を改め、技術開発や人材育成に優先して取り組むべきという折衷案的な考えも示された。
 今月14日の第2回会議に続き、ILC計画を推進する素粒子物理学者らが説明。今回は国民理解や安全対策、費用分担などをテーマに取り上げ、質疑応答を行った。
 研究者側が求めているプレラボの創設について、大阪大の中野貴志・核物理研究センター長は「プレラボを設置するだけでも、(ILC実現に向けた)歯車が回り始めているのを示せる点は大きい。費用もそんなにかからないので、やってみる価値はある」と述べた。
 その一方、総合科学研究機構の横溝英明理事長は「プレラボの容認は、日本がILCへの参加を表明することになる」。低炭素社会戦略センター研究統括の森俊介・上席研究員も「国際協力を得るというが、どの国も新型コロナ対応でそれどころではなく、医療などに資源を投じてほしいと思っているはず。有識者会議として、この道が良いと断言することは無理。むしろ引き返す道を選ぶべきだ。段階を踏んで、確実にゆっくりできる体制を取っては」と指摘した。
 東京大の岡村定矩名誉教授、同大カブリ数物連携宇宙機構の横山広美教授は、日本誘致など建設候補地に関わる取り組みを切り離すべきだと主張。横山教授は「ヨーロッパが検討している大型研究計画の状況など、素粒子の大型研究を巡る動向は流動的。建設地に関する検討や研究は後回しにして技術開発をしながら、この分野の研究が途絶えない状況をつくり、合意できるタイミングが来たら決断できればよいのでは」と述べた。
 次回会議の開催日は未定だが、有識者会議の見解を示す「まとめ」の内容などについて協議する。

誘致活動 再検証の時か
 【解説】ILC計画を推進する研究者らは「日本誘致に前向きな姿勢を」との表現で、日本政府に迫っている。もちろん最終決断ではない。しかし巨額な予算、目まぐるしく変化する国内外の情勢などもあり、文部科学省にとって態度を明確にすること自体「非常に重いプロセス」(坂本修一・文科省大臣官房審議官)というのが実情だ。
 第2期有識者会議で委員の中から浮上したのは、一連の取り組みから「誘致」の2文字をいったん切り離すという提言。素粒子物理学や高エネルギー物理学における技術開発、人材育成などの環境を確保する、いわば当該分野を守ることに重きを置いた案だ。
 このことは同時に、北上山地誘致に向け活動してきた本県自治体の取り組みについても、「再考」が求められてくることを意味する。生活に身近なさまざまな地域課題が山積し、財政事情の厳しさを抱える中、いつ実現するのか不透明なプロジェクトに、どこまで付き合うのか――。一度冷静に立ち止まり、今後の進むべき道を再検証する時期に来ていると言える。
(児玉直人)
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