人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

「産学官連携、人材共有を」都市集中回避の先例に(本間希樹所長が提唱)

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tanko 2021-8-6 11:40

写真=県議会県政調査会で、地域と天文台との連携について述べる本間希樹所長(左)

 国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長は、基礎研究分野の担い手不足や財政問題、地域振興などの課題を解消する上で、産学官連携による人材シェア(共有)や技術協力の必要性などを提唱。地方を舞台とした基礎科学研究や人材育成の推進は、新型コロナウイルス感染拡大に見られるような、都市集中の問題を回避できるモデルケースにもなり得ると強調する。
(児玉直人)

 4日、県議会特別委員会室で開かれた第8回県議会県政調査会で講演した。本間所長は、旧水沢緯度観測所時代からの歴史、ブラックホール研究など現在の活動内容に触れながら、天文台と地域との今後の関わりについて自らの考えを示した。
 少子化や財政難の問題は、基礎科学の分野にも影響を与えており「人材をどう活用していくかが問われている」と強調。人材や技術を地域社会と共有する連携体制、地元大学との研究連携を検討しており、既に一部は実現している。
 人材の共有に関しては、博士号を持つ若手研究者を地元民間企業が雇用する取り組みを紹介。一般従業員の半分程度の勤務日数(時間)と給与を条件に採用してもらい、企業に勤務しない残り半分の時間を研究に費やしてもらう仕組みだ。
 企業にとっては、博士号を有する人材を低コストで雇用でき、学術研究や国際連携など研究者が得た高度なノウハウを製品開発や問題解決に生かせるメリットがある。著名スポーツ選手を雇用している企業のような立場になるため、企業ブランドのイメージアップにもつながる。
 研究者は、安定した収入の下で仕事と研究の両立、継続が可能になり、天文台など研究機関にとっては、研究者の新たな雇用形態を開拓できるという。これらの連携スタイルは、素粒子物理学者が検討し県などが誘致を進めている巨大実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の地ならしにもなるとした。
 このほか地元企業との技術協力、岩手大・県立大・天文台水沢の3者による研究センター設置の可能性なども模索している。本間所長は「都市部に行かなくても基礎科学研究に関する勉強、研究、仕事ができれば新たな魅力創出になる。新型コロナの感染拡大は都市に人が集まり過ぎていることを物語っているとも言える。地域活性化の道具に、天文台が貢献できたら」と自らの考えを述べた。
 議員からは、人材育成の一環として学校教育と天文台との連携の充実などに関する質問が出された。
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