人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ブラックホール解明の手掛かりに(天文学史上最大の同時観測、成果発表)

投稿者 : 
tanko 2021-4-15 10:00

画像=世界各地や宇宙空間の望遠鏡によって観測された巨大BHの姿。左列6種類は電波、中央3種類は可視光線、右列4種類はガンマ線などでとらえた((c)EHT多波長サイエンス作業班)

 国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)の研究者らが参加する天文学研究のプロジェクトチームは14日、巨大ブラックホール(BH)を同時観測した成果を発表した。巨大BHの観測としては天文学史上最大規模のプロジェクトで、同観測所の天文広域精測望遠鏡(VERA)など19の望遠鏡や観測網、装置群を駆使。謎多き天体の研究に寄与するデータを提供する成果を打ち出した。
(児玉直人)

 観測対象は、国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」が一昨年春に画像公開したのと同じ巨大BH。楕円銀河「M87」の中心部にある。地球から見ておとめ座の方向にあり、距離にして約5500万光年(1光年=約9.5兆km)かなたにある。
 EHTは17年4月、地上の電波望遠鏡8台を連動させBHを撮影。ほぼ同時期に水沢のVERAなど各国の望遠鏡群、宇宙空間にあるハッブル宇宙望遠鏡などが同じBHを観測していた。32の国と地域の760人余りが携わったという。
 天体から発する電磁波には、人間が光や色として視認できる「可視光線」のほか、可視光線よりも波長が長くエネルギーが低い「マイクロ波」「電波」、可視光線より波長が短く高エネルギーの「エックス線」「ガンマ線」がある。対応できる波長の種類は装置により異なるが、それぞれの波長には観測できる現象の得意分野がある。
 それぞれの望遠鏡が、ほぼ同時に同じBHを観測したことで、BHが発するさまざまな種類の電磁波ごとにBHの性質を解明でき、BHの活動状況や構造解明につながるデータを多角的に得られる。
 波長が異なる電波とガンマ線だが、研究者の間ではBHの同じ領域から放射されると考えられていた。しかし今回の観測データをもとに、同観測所敷地に設置されているスーパーコンピューター「アテルイ?」で解析したところ、ガンマ線は電波と異なる場所から生成されている可能性が高いことが分かった。
 今回の研究プロジェクト全体を取りまとめた同観測所の秦和弘助教は「何でも吸い込むと言われるBHからは、勢いよくジェット(プラズマ粒子)が出ている。なぜ、そのような現象が起きるのかの謎は、他の波長の観測があって初めて解明できる。大規模な観測が実現でき感無量。BHの撮影画像とさまざまな波長の観測データを組み合わせた研究の第一歩になるだろう」と意義を強調している。
トラックバックpingアドレス http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/tb.php/1014

当ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は胆江日日新聞社に帰属します。
〒023-0042 岩手県奥州市水沢柳町8 TEL:0197-24-2244 FAX:0197-24-1281

ページの先頭へ移動