ブラックホールの謎に肉薄 整った磁場 存在する証拠(国立天文台・水沢の研究者ら参加)
- 投稿者 :
- tanko 2021-3-26 11:00

写真=巨大ブラックホールの新たな姿としてEHTが公開した画像。右側の筋は整った磁場の存在を示す=(C)EHT
国立天文台水沢VLBI観測所の本間希樹所長(49)ら、同観測所研究者が所属する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、一昨年春に公開していた巨大ブラックホールの画像再現に用いた観測データを解析。ブラックホールのすぐそばに、整列した磁場が存在する証拠を突き止めた。ブラックホールからは「ジェット」と呼ばれるプラズマ粒子が、非常に広大な範囲まで噴出している。本間所長は「ジェットのメカニズムを解明する上でも非常に重要な成果だ」と強調している。(児玉直人)
EHTは2019年4月、地球から約5500万光年(1光年=約9.5兆km)離れた「M87銀河」の中心にあるブラックホールの直接撮影に成功したと発表。いびつな光の輪(リング)の中央に、ブラックホールの影が黒く写り込んだ画像は「人類が初めて目にしたブラックホールの姿」として、大きな注目を集めた。
この画像を再現する際に用いた観測データを詳細に解析したところ、リングの大部分から発生する光には、特定の方向に偏った「偏光」の性質があることが判明した。
解析結果に基づき再現した新たな画像には、リングの下から右側にかけ、砂地をほうきで掃いた時のような整った筋状の線が現れた。本間所長は「リングの全体に偏光があり、磁場が存在しているが、線がよりよく見える右側が特に磁場が強いことを表している」と説明する。
一般に知られているブラックホールは「何でも吸い込み、二度と出てくることができない」という特徴が知られている。それとは相反する形で、プラズマ粒子がブラックホールに引き寄せられる寸前で、ジェットとして宇宙空間に飛び出している。ジェットの噴出距離は約5000光年とも言われるが、太陽系ほどしかないブラックホールの領域からどのように粒子が飛び出すのか、正確な仕組みは解明されていない。
EHTはハワイや南北アメリカ大陸、南極大陸、西欧の電波望遠鏡9局を連動させるVLBI(超長基線電波干渉法)を用いて、巨大ブラックホールの観測を実施している。