人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

粒子処理装置に測定器(ILC計画、研究者が新アイデア)

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tanko 2021-3-25 10:10

図=ILC施設における主要設備やビームダンプの位置
(C)Rey.Hori/KEK、高エネルギー加速器研究機構提供の図を基に作成

 北上山地が有力候補地になっている素粒子実験施設「国際リニアコライダー(ILC)」の推進派研究者の一人、米・カリフォルニア大学バークレー校教授の村山斉氏は23日、東北ILC推進協議会が主催したオンライン講演会に出演。ILC内部に設置される電子、陽電子の吸収処理装置「ビームダンプ」の近くに、未知の物質「暗黒物質」を探す測定器を設置する新たなアイデアを披露した。
(児玉直人)

 村山氏は昨年8月に発足したILC国際推進チーム(IDT)で、物理・測定器作業部会の議長を務めている。カリフォルニアからのネット中継で講演した村山氏は、ILCの科学的意義をあらためて強調。施設の随所に別な測定器(センサー)を設け、暗黒物質の解明を進める新たな構想についても紹介した。
 これまでのILC講演会などでは、電子と陽電子の粒子を衝突させる実験が主に説明されていた。しかし、全ての粒子が衝突するわけではない。光の速さに匹敵する速度の粒子を安全に停止させ、処分する場所がビームダンプ。「粒子の墓場」とも言われる装置で、内部は約100tの水で満たされている。
 講演で村山氏は「水と粒子が反応した際、暗黒物質のようなものが生まれるかもしれない」と説明。「ビームダンプの近くに暗黒物質を探索する新たな測定器を設置しようというアイデアが出ている」と述べた。
 暗黒物質は現在の宇宙が形成された理由をひもとく上で、素粒子物理だけでなく天文学など他分野の研究者も注目している謎の物質だ。村山氏は「ILCは何十年も活用できる施設。その機能を最大限に活用したい」と力を込めた。
 ビームダンプでは粒子が水に吸収される際に、放射性物質のトリチウムが発生。福島第1原発事故の汚染水処理を困難にさせている存在として知られ、ILC反対派・慎重派の地域住民らがILC誘致実現に懸念を示している要因の一つになっている。
 推進派研究者らは住民説明の場などで、厳重な安全管理の徹底を講じると主張し、誘致実現に理解を求めている。日本学術会議でも他分野研究者から安全管理の確実性に指摘があり、IDTにおいて懸念される課題の解決に向けた協議を進めているという。
 同日は村山氏のほか、IDT議長の中田達也氏(スイス連邦工科大学ローザンヌ校教授)がスイスから、IDT加速器作業部会の道園真一郎氏(高エネルギー加速器研究機構教授)が茨城県から、それぞれネットを通じて講演。このうち中田氏は「IDTは1年半から2年、プレラボ(ILC準備研究所)は4年設置し、ILC研究所の立ち上げに至る。プレラボではコスト協議が一番重要になるが、ちゃんとしたコストを示すにはサイト(建設地)を決める必要がある。プレラボ設置期間の中ごろまでには、ILCをどこに建設するか正式承認しなければいけない」と述べた。
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