人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

眼視天頂儀や関連建築物が日本天文遺産に(国立天文台・水沢で保存)

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tanko 2021-3-16 10:00

写真=日本天文遺産に認定された(左から)眼視天頂儀、眼視天頂儀室、目標台・覆屋

 日本天文学会(梅村雅之会長、正会員2172人)は15日、水沢星ガ丘町の国立天文台水沢VLBI観測所(本間希樹所長)が保存する物件で構成される「臨時緯度観測所眼視天頂儀および関連建築物」を日本天文遺産に認定した。同天頂儀は初代所長・木村栄博士の「Z項」発見に大きく貢献した装置で、関連建築物は当時の観測状況を今に伝える貴重な物件であり天文学史的な価値も高いと評価された。
(児玉直人)

 同学会は1908(明治41)年創立。1世紀以上の歴史があるが、同遺産の認定制度は3年前に設けたばかり。歴史的に貴重な天文学・暦学関係の遺産を次世代に伝える目的で、▽史跡・建造物▽物品▽文献――などを対象としている。
 会員からの推薦を基に、同遺産選考委員会が候補を絞り、同学会代議員総会で決定。3回目となる本年度は「臨時緯度観測所――」のほか、「仙台藩天文学機器」(仙台市所有)、「商船学校天体観測所」(東京海洋大学所有)を新たに認定。認定総数は8件となった。
 「臨時緯度観測所――」は眼視天頂儀、眼視天頂儀室、眼視天頂儀目標台・覆屋の3物件で構成。いずれも水沢VLBI観測所敷地内に保存されている。
 眼視天頂儀は複数台あったが、今回の構成物件となった天頂儀は「木村榮記念館」内に展示している1号機。1899(明治32)年に木村がドイツから移送してきたもので、同年の観測所開所時から、1927(昭和2)年まで使用された。
 天頂儀が設置されていたのが、VLBI観測所敷地のほぼ中央にある眼視天頂儀室。地面から伝わるわずかな振動が観測に影響するため、頑丈な石積みの台座の上に置かれた。
 天頂儀室の真北、約100mの位置に設置されているのが目標台で、国内現存例が少ない施設。頑丈なれんが積みの台に電球点灯装置が固定されており、天頂儀室にいる観測者は、覆屋の窓越しに見える電球の明かりを頼りに正しい北の方角を確認し、天頂儀を操作していた。
 天頂儀室と目標台・覆屋は2017(平成29)年、国の登録有形文化財に指定されている。今回の天文遺産認定について、本間所長は「緯度観測所時代から水沢に伝わる施設や装置が日本天文遺産に認定され、所長として喜ばしく思う。これらが持つ科学的・歴史的価値をあらためて認識した。今後とも多くの人に見ていただけるよう整備と維持管理を行い、しっかりと後世に伝えていきたい」と話している。
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