人類史上初ブラックホール撮影に貢献した国立天文台水沢VLBI観測所は、120年の歴史を誇り今もなお世界とつながっている観測拠点。奥州市東部が候補地となっている国際リニアコライダー(ILC)の話題とともに、岩手県奥州市、金ケ崎町における科学やそれに関連する地域の話題(行政・産業経済・教育・まちづくり・国際交流など)を随時アップしていきます。(記事配信=株式会社胆江日日新聞社)

ILCの岩手県誘致 地方自治体の協力必要(研究者指摘)

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tanko 2013-2-1 18:10
 岩手県南地区町議会議長会(会長・青木幸保平泉町議会議長)主催の議員研修会は31日、金ケ崎町のホテルみどりの郷で開かれ、東北大大学院理学研究科物理学専攻助教の石川明正氏が「ヒッグス粒子とILC」と題して講演した。素粒子物理学の大規模研究施設・国際リニアコライダー(ILC)の有用性や経済波及効果、国内外の状況などを詳しく解説。北上山地への誘致に向け、地方自治体と研究者が協力し住民理解を深める取り組みを進めていく必要性を強調した。
 石川氏は、人類が長い時間をかけて解き明かしてきた素粒子研究について説明。昨年7月に「素粒子の標準理論」で最後の未発見粒子だったヒッグス粒子が発見されたが、「宇宙のエネルギーの総量が説明できないなど、まだまだ問題点が残っている。標準理論は究極の理論ではなく、標準理論を超える新しい理論があるはず」と展望する。
 解明には「ヒッグス粒子が最重要な鍵」と石川氏。ILCは、スイス・ジュネーブのセルン研究所にあるLHC(大型ハドロン衝突型加速器)より分解能・感度が優れるため、素粒子研究の加速が期待されるという。「ヒッグスの検出にLHCは1年、ILCなら1日。ヒッグス粒子の研究により、ノーベル賞級の発見があるかもしれない。そのためにもILCの早期建設を」と力を込めた。
 野村総研の試算によると、ILC建設の経済効果として建設10年、運用20年の間に約1万人が移り住み、約25万人の雇用が創出される。「経済効果は、北上山地で約4.3兆円。既存インフラが活用できる九州・脊振山地は2.5兆円で、北上山地に建設した方が経済効果が大きい」と指摘した。
 欧米の研究者から、日本への建設を支持する声が多く上がっていることを紹介。今年7月までを予定する国内候補地決定に向け、国や国会議員なども動き始めており、「研究者にできるのは学術的な件のみ。地方自治体が政府に働き掛けてほしい」と石川氏。「地方自治体と研究者が協力し、地域住民のILCに対する理解を深め、ILC建設を推進したい」と会場に呼び掛けた。
 県南地区町議会議長会は、金ケ崎、平泉、住田、西和賀の4町議会で構成。本年度3回目の議員研修会には、各議会議員ら63人が出席した。講演会後は交流会を行い、親交を深めた。

写真=ILCについて講演する東北大の石川明正氏
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